銀行や中央機関が発行する円やドルとは違い、仮想通貨はネットワーク上の仕組みによって自動的に生み出されるようになっています。
その仕組みのひとつが「マイニング」。取引データをまとめて記録し、その正しさを確認する作業に貢献すると、報酬として仮想通貨が新たに発行されるのです。

マイニングの特徴をまとめると、以下のようになります。

• 中央管理者がいない
  → 誰でも仕組みに参加でき、透明性が保たれています。
• 発行ルールがあらかじめ決まっている
  → プログラムに従って一定のタイミングで通貨が発行されます。
• 作業に貢献した分だけ報酬が得られる
  → 一方的な配布ではなく、きちんと「働き」に対して報われる仕組みです。

代表的な通貨ごとのマイニング対応状況と、報酬の仕組みは以下のとおりです。

ブロックチェーンは、過去の取引データをブロック単位で記録し、それを時系列でつないでいく台帳のようなものです。
マイニングは、その「次の1ページ」を書き加えるためのレースのような役割を果たしています。

マイニングの実際の流れは、おおまかに以下の手順で進みます。

• 世界中のマイナーが同時に計算をスタート
  → 難解な計算問題に挑みます。
• 一番早く正解を導き出した人がブロックを追加
  → 報酬を受け取るのはその人だけ。
• 新しいブロックがチェーンに追加される
  → 取引が正式に記録され、ネットワークが一歩進みます。

次に、マイニングの方式として代表的な「PoW」と「PoS」の違いについて見ていきましょう。

PoWは、ビットコインをはじめとする初期の仮想通貨で採用されてきた方式です。
世界中のマイナーが計算処理を競い、最初に正解を導き出した人がブロックを作る権利と報酬を得ます。つまり「計算力が勝負の鍵」となる仕組みです。

以下のポイントを見ると、PoWがなぜ計算力勝負と言われるのか、そして環境面での課題が指摘される理由がわかります。

• 高性能マシンが有利
  → 専用のマイニングマシンが必要になるケースも。
• 電力消費が大きい
  → 多くの電気を使うため、環境面での課題も指摘されています。
• 世界中で競争が起きている
  → 報酬を狙って、常にマイナー同士の計算勝負が繰り広げられています。

PoSは、持っている通貨の量や保有期間に応じてブロック生成の権利が決まる方式です。
計算力ではなく「保有量」が鍵となるため、エネルギー消費は少なく、最近はPoSへ移行する通貨も増えています（イーサリアムもその一例）。

下のポイントを見ると、PoSが省エネで環境に優しいとされる理由、そして保有者にインセンティブが与えられる仕組みがわかります。

• たくさん持っている人が有利
  → 保有量が多いほど選ばれる確率が上がります。
• 電力をあまり使わない
  → 計算競争がないので、エネルギー効率は抜群です。
• ペナルティ制度もある
  → 不正を働くと保有通貨が減る仕組みで、ネットワークの安全性を守ります。

最後に、PoWとPoSの違いを代表的な通貨とともにまとめると、以下のようになります。

PoWは強力なセキュリティを誇る一方、電力消費や環境負荷の高さが課題です。
そのため、より省エネで持続可能なPoSへと移行する動きが広がっているのです。

次は、マイニングを行うことで得られる報酬の仕組みや計算方法について見ていきましょう。

ブロック報酬は、新しいブロックを生成したマイナーに与えられる仮想通貨のことです。
ビットコインの場合、一定期間ごとに「半減期」があり、報酬額は段階的に減少していきます。これは新規発行量をコントロールし、通貨の価値を守る重要な仕組みです。

例えば下記の例からわかるように、ビットコインは発行ペースを意図的に落とし、インフレを防いでいます。

• ビットコインの例：
  最初は1ブロックあたり50BTCでしたが、2024年時点では3.125BTCまで減少。
• 新規発行の抑制：
  報酬を減らすことで、通貨の供給量を抑え、インフレを防ぐ狙いがあります。

ブロック報酬のほかに、ユーザーが支払う取引手数料もマイナーの報酬になります。
特にネットワークが混雑しているときは、手数料が上がる傾向があり、優先的に処理してもらいたいユーザーは高めに設定します。

次のポイントを押さえておくと、取引手数料がどのようにマイナーの収入を左右するのかが見えてきます。

• ユーザーが手数料を設定：
  高めに設定すれば、トランザクションが優先的に処理される可能性が高まります。
• 混雑時は競争が激化：
  ブロックに入れられる取引には上限があるため、手数料を上げるユーザーが増えます。

これらを整理すると、マイニング報酬には大きく2種類があり、それぞれ性質や発生のタイミングが異なります。以下の表はその違いを簡単にまとめたものです。

このように、マイニングの収益構造は時間とともに変化していきます。次のセクションでは、この報酬を得るための主なマイニング方式と、それぞれの特徴について見ていきましょう。

ビットコインのブロックチェーンでは、およそ10分ごとに新しいブロックが追加され、その都度マイナーに報酬が与えられます。
ただし、この報酬はずっと同じではなく、約4年ごとに半分になる「半減期」という仕組みがあります。
下記のリストは、これまでの主な半減期と報酬額の推移をまとめたものです。数字を追うことで、報酬が段階的に減っている様子がわかります。

• 2009年：50BTC（初期の報酬）
• 2012年：25BTC
• 2020年：6.25BTC
• 2024年：3.125BTC（現在）

現在のビットコインマイニングには、非常に高い計算能力が必要です。
そのため、一人で報酬を得るのはほぼ不可能と言われており、多くの人が「マイニングプール」と呼ばれるグループに参加しています。
下記のリストでは、マイニングプールの基本的な特徴や仕組みを紹介します。

• みんなで力を合わせる
  → 各自のマシンで処理を分担し、チームで成果を出します。
• 報酬は貢献度に応じて分ける
  → どれだけ計算したかに応じて、報酬が分配されます。
• 代表的なプール
  → Foundry USA、Antpool、F2Pool などが有名です。

次の表では、代表的なマイニングプールとその特徴、公式サイトの情報をまとめています。参加を検討する際の比較材料として参考になります。

では、もしあなたが個人でマイニングを始める場合、どのような準備や機材が必要になるのでしょうか。
次のセクションでは、「個人がマイニングするには？」という視点から具体的な手順や注意点を解説します。

今のビットコインマイニングには、専用のマイニングマシン（ASIC）が必須です。
家庭用PCでは全く歯が立たず、24時間フル稼働できるような電源と冷却設備も必要になります。
以下は、マイニングを行ううえで最低限そろえるべき設備と、その役割の概要です。

• ASIC（専用マシン）
  → ビットコインのマイニング専用に設計されていて、GPUよりも処理速度が圧倒的。
• 安定した電力供給
  → 突然の停電や電圧の乱れがあると、機器にダメージを与えることも。
• 冷却設備
  → マシンはかなりの熱を出すので、エアコンや換気設備が欠かせません。

マイニングを続けていくうえで、電気代と収益のバランスはとても重要です。
下表は、一般的なASICマシンを使った場合の消費電力やコスト、収益の一例です。
実際の数値は地域の電気単価やビットコインの価格によって変動しますので、あくまで目安としてご覧ください。

「機材をそろえるのはちょっと…」という方には、クラウドマイニングという方法もあります。
自分で設備を用意する必要がなく、マイニング事業者と契約して報酬を受け取る仕組みです。
以下は、その基本的な流れを簡単にまとめたものです。

• クラウドマイニング業者と契約
  → 契約はオンラインで完結。必要な初期費用を支払います。
• 成果に応じて報酬を受け取る
  → 自分でマシンを動かす必要はありません。
• 詐欺には注意
  → 実態のない業者や、高利回りをうたうサービスには慎重に。

ここまでで、個人がマイニングを始めるための手段や必要な準備について理解できたと思います。
しかし、設備投資や電気代以外にも、価格変動や運用上のトラブルなどのリスクが存在します。
次は、マイニングに伴うリスクと注意点について詳しく見ていきましょう。

マイニングで最も大きなコストになるのが電気代です。
ビットコインの価格が下がったり、電力単価が上がったりすると、収益より出費が上回ってしまうことも珍しくありません。

下記は電気代に関する代表的な注意点をまとめたもので、どのような要因で採算が悪化するのかが分かります。

• 変動する収益
  → BTCの相場次第で採算が悪化することも。
• 電気料金は地域差あり
  → 一部地域では高コストになりやすい傾向があります。
• 24時間稼働による積み重ね
  → 少しの差でも月単位・年単位では大きな違いに。

マイニング機器は常に高い負荷で動作しているため、故障や劣化が避けられません。
さらに、新しい機材が登場すると、手元の機器がすぐに型落ちになってしまうことも。

下記の表では、マイニング機材に関する主なリスクと、それに対する代表的な対策を整理しています。

自宅などでマイニングを行う場合は、インターネット環境やセキュリティ対策も大切です。
回線が不安定だったり、外部からの攻撃リスクがあると、マイニングどころではなくなってしまいます。

下記はネットワーク面で想定される主なリスクと、その概要です。

• ネット接続が不安定
  → 一時的に止まってしまい、報酬に影響が出ることも。
• ポート開放によるリスク
  → 外部アクセスによるハッキングに要注意。
• マルウェア感染
  → 他人にマイニングパワーを奪われるケースもあります。

これらのリスクを理解しておくことで、マイニングの安全性と収益性を高められます。
次は、こうした疑問や不安に答えるための「マイニングに関するよくある質問（FAQ）」を見ていきましょう。

使用する機材や規模によって大きく異なりますが、個人でASICマイナーを導入する場合は数十万円〜数百万円かかるケースもあります。
グラフィックボード（GPU）を使ったマイニングなら数万円から始めることも可能です。

下記は、代表的なマイニング機材の特徴と用途をまとめたものです。どの方式で始めるか検討する際の参考にしてください。

• ASIC（専用機器）：本格的にマイニングしたい方向け。高性能・高価格。
• GPU（パソコン向けのグラボ）：手軽に始めたい人向け。対応通貨は限られる。

日本国内ではマイニング自体は違法ではありません。
ただし、電気の無断使用や他人のPCに無断でマルウェアを仕込んでマイニングさせる行為は犯罪行為となりますので注意が必要です。

一応可能ですが、性能が非常に低いため現実的ではありません。
スマホやノートPCでのマイニングは、端末に大きな負荷がかかり、バッテリーの劣化や故障リスクが高いためおすすめできません。

以下は、スマホやノートPCでマイニングを行う際に直面しやすい問題点です。

• スマホは熱に弱く、冷却性能が不足
• 処理能力が低く、報酬がほとんど得られない
• OSやアプリの制限で動作が不安定になることも

はい、日本ではマイニング報酬も課税対象となります。
得られた仮想通貨の取得時点の時価で計算され、雑所得として確定申告が必要になります。

下記の表は、日本におけるマイニング収益の課税区分と必要書類を整理したものです。確定申告の際の参考にしてください。

以上のFAQを踏まえれば、マイニングの基本的な疑問や誤解はかなり解消されるはずです。
次のセクションでは、本記事のポイントを整理しながら、マイニングの仕組みや魅力を改めて振り返ります。