ETH(イーサリアム)とは?

イーサリアム(Ethereum)は、あらかじめ設定された条件に従ってプログラムを自動実行する「スマートコントラクト」に対応したブロックチェーン基盤です。分散型金融(DeFi)やNFTなど、さまざまなサービスの開発・運用に利用されています。
イーサリアムのネットワークで使われる暗号資産がETH(イーサ)です。ETHは送金・決済だけでなく、ネットワーク手数料の支払いや、取引の検証に参加するステーキングにも使用されます。
このページでは、イーサリアムの基本情報から、誕生の歴史、仕組みや特徴、価格推移、主な用途、長所・課題、現在の状況と今後の展望まで詳しく解説します。
| 名前 | Ethereum(イーサリアム) |
|---|---|
| 単位 | ETH |
| 種類 | ネイティブ通貨 |
| 発行上限 | 上限なし |
| 過去最高値 | 4,953.73ドル(2025年8月24日) |
| 運用開始日 | 2015年7月30日 |
| 開発者・開発主体 | ヴィタリック・ブテリン、ギャビン・ウッド、ジョセフ・ルービンほか |
| コンセンサスアルゴリズム | Proof of Stake(PoS) |
| 主な用途 | 送金・決済、ガス代の支払い、ステーキング、投資・保有 |
| チェーンの名称 | Ethereum(イーサリアム) |
| 公式サイト | Ethereum公式サイト |
| 公式資料 | Ethereumホワイトペーパー |
イーサリアムが誕生した背景と歴史
イーサリアムは、ビットコインの登場によって注目されたブロックチェーンを、送金や取引の記録だけでなく、さまざまなプログラムを実行できる基盤として活用する構想から生まれました。2013年にヴィタリック・ブテリンが提案し、2015年7月にネットワークの運用が始まりました。
運用開始後は、分散型金融(DeFi)やNFTなどへ利用が広がり、2022年には取引承認方式をProof of Work(PoW)からProof of Stake(PoS)へ移行しました。その後も、レイヤー2を活用した処理能力の拡張など、ネットワークの改良が進められています。
イーサリアムが誕生した背景
イーサリアムが構想された背景には、ブロックチェーンの用途を送金や決済にとどめず、さまざまなアプリケーションの開発に広げたいという考えがありました。当時のビットコインにも取引条件を指定する機能はありましたが、複雑なプログラムを実行するには制約があり、用途ごとに新しいブロックチェーンを開発することにも負担がありました。
さまざまなアプリケーションを開発できる基盤の構想
ビットコインの登場によって、特定の管理者に依存せずに取引を記録・検証できるブロックチェーンの仕組みが注目されるようになりました。一方、当時のビットコインに搭載されていたプログラム機能は、複雑な処理や幅広いアプリケーションの開発を目的としたものではありませんでした。
こうした制約に対し、ヴィタリック・ブテリンは2013年にイーサリアムを構想し、同年11月にホワイトペーパーの初期版を共有しました。そこでは、ブロックチェーンに汎用的なプログラム実行機能を持たせることで、開発者が用途ごとに新しいネットワークを構築しなくても、共通の基盤上でさまざまなサービスを作れる仕組みが提案されました。
この構想の中心となったのが、あらかじめ設定した条件に従って処理を実行する「スマートコントラクト」です。これにより、通貨の移転だけでなく、デジタル資産の管理や契約に基づく処理などを、ブロックチェーン上で実現することが目指されました。
開発チームの形成とネットワークの公開
2014年1月、ブテリンは米国マイアミで開催されたビットコイン関連のカンファレンスで、イーサリアムの構想を公に発表しました。その後、ギャビン・ウッドやジョセフ・ルービンなどの共同創設者が開発に加わり、技術仕様の策定やソフトウェア開発、プロジェクトの運営体制の整備が進められました。
開発資金を確保するため、2014年7月から8月には、暗号資産ETHをビットコインと引き換えに販売する資金調達が実施されました。この販売では約31,000BTCを調達し、ネットワークの開発や公開に向けた準備が進められました。
その後、テストネットでの動作確認などを経て、2015年7月30日に最初のメインネット「Frontier」が公開されました。これにより、イーサリアムは構想段階から、実際にスマートコントラクトを実行できるブロックチェーンネットワークとして運用を開始しました。
イーサリアムの歴史
イーサリアムは2015年の運用開始以降、スマートコントラクトを活用したサービスの普及と、ネットワーク自体の技術改良を重ねてきました。2016年には大規模な資産流出事件をきっかけにブロックチェーンが分岐し、その後はDeFiやNFTの普及によって利用が拡大しました。2022年には取引承認方式をPoSへ移行し、近年はレイヤー2の拡張や使いやすさの改善が進められています。
| 時期 | 主な出来事 |
|---|---|
| 2015年7月 | 最初のメインネット「Frontier」が公開され、イーサリアムの運用が開始される。 |
| 2016年7月 | 「The DAO」の資産流出事件への対応をめぐってブロックチェーンが分岐し、Ethereum(ETH)とEthereum Classic(ETC)に分かれる。 |
| 2017年 | ERC-20トークンを利用した資金調達(ICO)が広がる。NFTゲーム「CryptoKitties」も登場し、金融以外の用途が注目される。 |
| 2020年 | DeFiサービスの利用が急拡大する。12月にはPoSへの移行に向けた「Beacon Chain」が稼働を開始する。 |
| 2021年8月 | 「London」アップグレードでEIP-1559が導入され、ガス代の仕組みが変更される。基本手数料のバーンも開始される。 |
| 2021年 | デジタルアートやコレクティブルなどのNFT市場が拡大し、イーサリアムを利用したサービスへの関心が高まる。 |
| 2022年9月 | 「The Merge」が完了し、取引承認方式がProof of Work(PoW)からProof of Stake(PoS)へ移行する。 |
| 2023年4月 | 「Shapella」アップグレードによって、ステーキングされたETHの引き出しが可能になる。 |
| 2024年3月 | 「Dencun」アップグレードで、レイヤー2のデータ記録コストを抑える「Blob」が導入される。 |
| 2025年5月 | 「Pectra」アップグレードが実施され、アカウント機能やステーキングの運用効率、レイヤー2向けのデータ処理能力が改善される。 |
| 2025年12月 | 「Fusaka」アップグレードが実施され、PeerDASの導入などによってレイヤー2向けのデータ処理能力の拡張が進む。 |
The DAO事件とEthereum Classicへの分岐
2016年、イーサリアム上で運営されていた投資プロジェクト「The DAO」のスマートコントラクトに脆弱性が見つかり、約360万ETHが不正に移動される事件が発生しました。The DAOは、参加者が出資した資金の使い道を投票で決定する分散型の投資組織として注目されていました。
事件後、流出した資産を取り戻すために、ブロックチェーンの状態を変更する「ハードフォーク」が提案されました。しかし、取引履歴への介入を認めるべきかについて、コミュニティ内で意見が分かれました。
その結果、2016年7月20日にハードフォークが実施され、資産回復のための変更を採用したネットワークが現在のEthereum(ETH)として運用を継続しました。一方、変更を受け入れなかった参加者が従来のルールによるネットワークを維持し、Ethereum Classic(ETC)として分かれました。
この事件は、スマートコントラクトの安全性だけでなく、重大な問題が発生した際に誰がネットワークの方針を決めるのかという、分散型ネットワークの運営上の課題を浮き彫りにしました。
DeFiとNFTの普及による利用の拡大
2017年頃から、イーサリアム上で独自のトークンを発行して資金を調達するICOが広がり、多くのプロジェクトが登場しました。同年には、デジタル上の猫を収集・売買できるゲーム「CryptoKitties」が公開され、ブロックチェーンをゲームやデジタル資産の管理に利用する動きも注目されました。
その後、暗号資産の交換や貸し借りなどを、銀行や取引所などの仲介機関を介さずに行う分散型金融(DeFi)の開発が進みました。2020年には、DeFiサービスに資産を預けて報酬を得る仕組みなどが利用者を集め、「DeFi Summer」と呼ばれる急成長期を迎えました。
2021年にはデジタルアートやコレクティブルなどのNFT市場も大きく拡大しました。こうした動きを通じて、イーサリアムは暗号資産の送金だけでなく、金融サービスやデジタルコンテンツなどを扱うネットワークとして利用されるようになりました。
Londonアップグレードによる手数料制度の変更
2021年8月には「London」アップグレードが実施され、取引手数料の仕組みを変更するEIP-1559が導入されました。それ以前は、利用者が提示する手数料によって取引の優先順位が決まり、混雑時には適切な手数料を見積もりにくいという問題がありました。
EIP-1559の導入によって、ネットワークの混雑状況に応じて変動する基本手数料が設定され、手数料を予測しやすくする仕組みへ変更されました。また、支払われた基本手数料をバーン(焼却)し、ETHの流通量から取り除く仕組みも導入されました。
このアップグレードは、利用者の手数料設定方法を変えただけでなく、ETHの供給量にも影響する重要な変更となりました。
The MergeによるProof of Stakeへの移行
イーサリアムは運用開始当初、ビットコインと同じProof of Work(PoW)を採用していました。しかし、ネットワークの消費電力や将来的な拡張性などを考慮し、開発初期からProof of Stake(PoS)への移行が検討されていました。
2020年12月には、PoSによる取引承認を担うための「Beacon Chain」が稼働を開始しました。当初は既存のメインネットとは別に運用され、バリデータによる取引承認の仕組みを段階的に整備していきました。
そして2022年9月15日、既存のメインネットとBeacon Chainを統合する「The Merge」が完了しました。これにより、イーサリアムの取引承認方式はPoWからPoSへ移行し、従来のマイニングによるブロック生成は終了しました。
The Mergeでは、既存のアカウントやETHの残高、スマートコントラクトなどを引き継いだまま取引承認方式が変更されました。ネットワークの消費電力は約99.95%削減され、イーサリアムの歴史の中でも特に大きな技術的転換となりました。
Shapella以降のアップグレードとレイヤー2の拡張
PoSへの移行後も、イーサリアムではネットワークの機能改善が続けられました。2023年4月の「Shapella」アップグレードでは、それまで引き出しが制限されていたステーキング中のETHや報酬を、所定の手続きを通じて引き出せるようになりました。
2024年3月の「Dencun」アップグレードでは、レイヤー2が取引データをイーサリアムに記録する際のコストを抑える「Blob」が導入されました。これにより、レイヤー2を活用したネットワークの拡張が進みました。
2025年5月の「Pectra」アップグレードでは、一般的なアカウントでスマートコントラクトの機能を利用しやすくする変更や、バリデータの運用効率を高める変更などが実施されました。
さらに同年12月の「Fusaka」アップグレードでは、ネットワーク参加者がデータの一部を検証することで、全体のデータが利用可能であることを確認する「PeerDAS」が導入されました。これにより、レイヤー2向けのデータ容量を拡張しやすくするための基盤が整備されました。
これらのアップグレードを通じて、イーサリアムはPoSへの移行を完了させた後も、利用者の操作性やネットワークの処理能力を改善するための開発を継続してきました。
イーサリアムの特徴
イーサリアムは、スマートコントラクトを実行できるブロックチェーンを基盤としており、さまざまなアプリケーションやトークンを扱えることが特徴です。また、Proof of Stake(PoS)による取引承認や、ETHを使ったネットワーク手数料の仕組み、レイヤー2による処理能力の拡張なども採用しています。
イーサリアムには、主に次のような特徴があります。それぞれの仕組みやネットワーク内での役割について、詳しく解説します。
イーサリアムの主な特徴
- スマートコントラクトを実行できるブロックチェーン
- Proof of Stakeによる取引承認
- ERC規格によるトークンの共通仕様
- ガスを用いたネットワーク手数料
- ETHの新規発行とバーンによる供給量の変化
- レイヤー2を活用した処理能力の拡張

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スマートコントラクトを実行できるブロックチェーン
イーサリアムは、ブロックチェーン上でプログラムを実行できることが大きな特徴です。このプログラムはスマートコントラクトと呼ばれ、あらかじめ設定された条件に従って、資産の移転や情報の更新などを自動的に処理できます。
スマートコントラクトは、特定の企業や管理者のサーバーだけで動作するのではなく、イーサリアムのネットワークに参加するノードによって実行・検証されます。そのため、共通のルールに基づいて処理を行い、その結果をブロックチェーンに記録できます。
スマートコントラクトが実行されるまでの流れ
スマートコントラクトを利用するには、まず開発者がプログラムを作成し、イーサリアムのブロックチェーン上に公開します。この公開作業は「デプロイ」と呼ばれ、プログラムにはネットワーク上で識別するためのアドレスが割り当てられます。
利用者がスマートコントラクトに対して取引を送信すると、プログラムに記述された条件や処理内容に従って実行されます。例えば、一定の条件を満たした場合にトークンを移転する仕組みであれば、条件を確認したうえで、該当する処理が実行されます。
実行によって変更された残高やデータは、取引がブロックに取り込まれることでネットワークの状態に反映されます。プログラムを一度公開すれば、利用者はそのスマートコントラクトに対して繰り返し操作を行えます。
EVMによって実行結果を検証する仕組み
スマートコントラクトの実行を支えているのが、EVM(Ethereum Virtual Machine/イーサリアム仮想マシン)です。EVMは、イーサリアム上のプログラムを共通のルールで実行するための仮想的な実行環境です。
開発者が作成したスマートコントラクトは、EVMが処理できる形式に変換され、ネットワーク上で実行されます。EVMでは、同じ実行前の状態と取引内容が与えられれば、どのノードでも同じ実行結果になるように設計されています。
各ノードは、ブロックに含まれる取引をEVMのルールに従って実行し、残高やスマートコントラクトのデータが正しく更新されているかを検証します。正しくない状態変更を含むブロックは受け入れられません。
この仕組みによって、特定のサーバーが計算した結果をそのまま信用するのではなく、ネットワークの参加者が共通のルールに基づいてスマートコントラクトの実行結果を確認できるようになっています。
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Proof of Stakeによる取引承認
イーサリアムは、Proof of Stake(PoS)と呼ばれる仕組みを採用しています。PoSでは、暗号資産ETHをネットワークに預け入れた「バリデータ」が、新しいブロックの作成や検証に参加します。
バリデータは、正しく取引を検証することで報酬を受け取れる一方、不正行為を行うと預け入れたETHの一部を失うことがあります。この報酬とペナルティを組み合わせることで、参加者が正しいルールに従って行動するよう促し、ネットワークの安全性を維持しています。
バリデータによるブロックの提案と検証
イーサリアムでは、時間を12秒ごとの「スロット」に区切り、各スロットで1人のバリデータがブロックの提案者として選ばれます。選ばれたバリデータは、送金やスマートコントラクトの実行などの取引情報をまとめ、新しいブロックをネットワークに提案します。
提案されたブロックは、ほかのバリデータやノードによって検証されます。取引内容や残高の変更などがネットワークのルールに従っているかを確認し、バリデータは支持するブロックに対して「アテステーション」と呼ばれる投票を行います。
こうしたブロックの提案と検証を繰り返すことで、特定の管理者がすべての取引を承認するのではなく、複数の参加者が共通のルールに基づいてブロックチェーンを更新しています。
バリデータの投票によってブロックが確定する仕組み
イーサリアムでは、ブロックが追加された段階と、その内容が正式に確定した段階が区別されています。ブロックが正式に確定した状態は「ファイナリティ」と呼ばれ、通常の取引処理では、そのブロックを後から変更できなくなります。
ファイナリティの判定には、32スロット(約6分24秒)を1つの区切りとする「エポック」が使われます。各エポックに設定された基準となるブロックに対して、預け入れられたETHの総量の3分の2以上に相当する支持が集まることで、所定の条件を満たしたブロックが確定します。
確定したブロックを覆すには、大規模な不正行為と、それに伴う大量のETHの損失が必要になります。この仕組みにより、取引履歴の改ざんを経済的に極めて困難にしています。
報酬とペナルティによるネットワークの安全性維持
バリデータは、ブロックの提案や正しい投票など、ネットワークの運用に貢献することでETHの報酬を受け取ります。報酬は参加状況やネットワーク全体のステーキング状況などによって変化し、一定額が保証されているわけではありません。
一方、バリデータがオフラインになるなどして必要な投票を行わなかった場合は、報酬を得られないだけでなく、預け入れたETHにペナルティが科されることがあります。
さらに、同じスロットで矛盾するブロックを提案したり、不正な二重投票を行ったりした場合には、「スラッシング」と呼ばれる厳しいペナルティの対象になります。スラッシングが適用されると、預け入れたETHの一部が没収・焼却され、バリデータはネットワークの検証活動から強制的に退出させられます。
このように、正しい行動には報酬を与え、不正行為には経済的な損失を発生させることで、バリデータがネットワークを攻撃する動機を抑える仕組みになっています。
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ERC規格によるトークンの共通仕様
イーサリアムでは、トークンやスマートコントラクトの機能を共通化するために、ERC(Ethereum Request for Comments)と呼ばれる規格が利用されています。ERC規格では、トークンの残高確認や送付など、プログラムが備えるべき機能や操作方法を定めています。
開発者が共通規格に従ってトークンを作成することで、ウォレットや分散型アプリケーションは、トークンごとに異なる処理を用意しなくても、共通の方法で操作できるようになります。
ERC-20とERC-721で定められる仕様
イーサリアムで代表的なトークン規格には、ERC-20とERC-721があります。どちらもスマートコントラクトの共通仕様ですが、扱うトークンの性質が異なります。
ERC-20は、同じ種類のトークンを互いに交換できる「代替可能トークン」の規格です。暗号資産やステーブルコインなどに利用され、残高の確認、トークンの送付、第三者への利用許可といった機能が定められています。
一方、ERC-721は、トークンごとに固有の識別番号を持つ「非代替性トークン」の規格です。各トークンの所有者を記録し、所有権を移転するための機能が定められており、NFTの発行や管理に利用されています。
このように、ERC規格はトークンの性質に応じて必要な機能を定義しており、開発者は目的に合った規格を採用できます。
共通規格によってウォレットやアプリケーションが連携できる仕組み
ERC規格の重要な役割は、異なる開発者が作成したトークンでも、共通の操作方法で扱えるようにすることです。
例えば、ERC-20に対応したウォレットは、トークンのスマートコントラクトに対して共通の残高確認機能を呼び出すことで、利用者が保有する数量を取得できます。また、送付機能も共通化されているため、規格に準拠した複数のトークンに同じ基本操作を利用できます。
分散型取引所などのアプリケーションでも、共通規格を利用してトークンの残高を確認したり、利用者から許可された範囲でトークンを移転したりできます。これにより、新しいトークンが登場するたびに、すべてのサービスが専用の操作方法を開発する必要がなくなります。
ERC-721についても、共通の仕様を通じてNFTの所有者や識別番号を確認できるため、対応するウォレットやマーケットプレイスなどでNFTを管理・取引する仕組みを構築できます。
ただし、ERC規格への準拠だけで、すべてのウォレットやサービスへの対応が保証されるわけではありません。実際に利用できるかどうかは、各サービスの対応状況にも左右されます。
ガスを用いたネットワーク手数料
イーサリアムでは、送金やスマートコントラクトの実行に必要な計算資源の使用量を、ガス(Gas)という単位で表します。ネットワーク上で取引を実行する際には、使用したガスの量に応じて手数料が発生します。
手数料は、処理に必要なガスの量と、ガス1単位あたりの価格によって決まります。また、ガス価格にはネットワークが設定する基本手数料と、利用者が設定する優先手数料があり、これらを組み合わせて実際の支払額が計算されます。
処理内容によって異なるガス使用量
イーサリアムでは、実行する処理の内容によって必要なガスの量が異なります。例えば、通常のETH送金では基本的に21,000ガスを使用しますが、スマートコントラクトを使ったトークンの移転や複雑な取引では、より多くのガスが必要になることがあります。
ガス1単位あたりの価格は、一般的にGwei(ギガウェイ)という単位で表されます。1Gweiは0.000000001ETHに相当し、実際の手数料はガス使用量とガス価格を掛け合わせて計算されます。
例えば、21,000ガスを使用するETH送金で、ガス価格が12Gweiだった場合、手数料は「21,000 × 12Gwei = 0.000252ETH」となります。このように、同じ送金処理でもガス価格が変われば支払う手数料も変化します。
基本手数料と優先手数料の仕組み
イーサリアムのガス価格は、主に基本手数料(Base Fee)と優先手数料(Priority Fee)の2つで構成されています。
基本手数料はネットワーク側で自動的に決定される手数料です。直前のブロックで使用されたガス量に応じて調整され、取引需要が多いと上昇し、少ないと低下する仕組みになっています。支払われた基本手数料は、バリデータの報酬にはならず、バーン(焼却)されます。
一方、優先手数料は、バリデータに取引を優先して取り込んでもらうために利用者が設定する追加の手数料です。基本手数料とは異なり、取引をブロックに取り込んだバリデータに支払われます。
例えば、基本手数料が10Gwei、優先手数料が2Gweiの場合、ガス1単位あたりの価格は合計12Gweiになります。ネットワークでは、この2つの手数料を組み合わせることで、取引需要に応じた価格調整と、バリデータへの報酬を両立しています。
ガスリミットと最大手数料の設定
イーサリアムの取引では、手数料に関する上限を設定することもできます。代表的な項目が「ガスリミット」と「最大手数料」です。
ガスリミット(Gas Limit)は、1回の取引で使用できるガス量の上限です。スマートコントラクトの実行などで必要なガス量がこの上限を超えると、処理は途中で停止し、取引は失敗します。その場合も、実行に消費されたガスの手数料は発生します。
一方、最大手数料(Max Fee Per Gas)は、ガス1単位あたりに支払ってもよい価格の上限です。実際のガス価格がこの上限より低かった場合、差額は支払われません。
また、ガスリミットは実際のガス使用量とは異なります。取引が正常に完了した場合、設定したガスリミットのうち使用しなかった分には手数料がかかりません。
これらの設定は、多くのウォレットで取引内容やネットワークの状況に応じて自動的に見積もられます。利用者は通常、提示された手数料を確認したうえで取引を実行できます。
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ETHの新規発行とバーンによる供給量の変化
イーサリアムの暗号資産ETHには、ビットコインの2,100万BTCのような固定された発行上限がありません。その代わり、ネットワークを維持するための新規発行と、既存のETHを消滅させるバーン(焼却)によって、供給量が変化する仕組みを採用しています。
新規発行はETHの供給量を増やし、バーンは供給量を減らす働きをします。そのため、ETHの供給量は一方的に増え続けるわけではなく、それぞれの数量の関係によって増加する場合も減少する場合もあります。
バリデータへの報酬として新しいETHを発行
イーサリアムでは、Proof of Stake(PoS)による取引承認に参加するバリデータへの報酬として、新しいETHが発行されます。ブロックの提案や取引の検証など、ネットワークを安全に維持するための活動に対して報酬が与えられる仕組みです。
新規発行されるETHの量は、ネットワーク全体でステーキングされているETHの数量などに基づいて決まります。ステーキング総量が増えると、ネットワーク全体の新規発行量も増える仕組みですが、ステーキングされたETHあたりの報酬率は低下する傾向があります。
なお、バリデータが受け取る報酬のすべてが新規発行されるわけではありません。利用者が支払う優先手数料もバリデータの収入になりますが、これは既存のETHが移転するものであり、供給量を増やすものではありません。
基本手数料のバーンによってETHの供給量を減らす
ETHには新規発行だけでなく、すでに存在するETHを永久に消滅させる「バーン」という仕組みがあります。代表的なのが、ネットワーク手数料の一部をバーンする仕組みです。
イーサリアムでは、送金やスマートコントラクトの実行時に支払われるガス代のうち、基本手数料(Base Fee)がバーンされます。バーンされたETHはバリデータなどに分配されるのではなく、供給量から取り除かれます。
バーンされるETHの量は、ネットワークの利用状況によって変化します。多くの取引が実行され、ガスの使用量や基本手数料が大きくなると、バーンされるETHも増加します。一方、ネットワークの利用が少ない場合には、バーンされる数量も小さくなる傾向があります。
新規発行量とバーン量の差によって供給量が増減する
ETHの供給量は、主に新規発行される数量とバーンされる数量の差によって変化します。新規発行量がバーン量を上回れば供給量は増加し、反対にバーン量が新規発行量を上回れば供給量は減少します。
例えば、一定期間に1,000ETHが新規発行され、600ETHがバーンされた場合、供給量は差し引き400ETH増加します。反対に、1,000ETHの新規発行に対して1,200ETHがバーンされた場合は、供給量が200ETH減少します。
なお、実際にはバリデータへのペナルティによってETHが減少する場合もありますが、供給量の変化を理解するうえでは、新規発行と基本手数料のバーンが主要な要素となります。
このように、ETHは固定された発行上限を持たない一方で、新規発行とバーンのバランスによって供給量が調整される仕組みです。ただし、バーンが常に新規発行を上回るわけではないため、供給量が継続的に減少することが保証されているわけではありません。
レイヤー2を活用した処理能力の拡張
イーサリアムでは、メインネットの処理能力を拡張するために、レイヤー2(L2)と呼ばれるネットワークが活用されています。レイヤー2は、イーサリアムのメインネットとは別の環境で取引を処理し、その結果をメインネットに記録・検証することで、より多くの取引を処理できるようにする仕組みです。
代表的な方式が、複数の取引をまとめて処理する「ロールアップ」です。ロールアップでは、取引の実行をレイヤー2が担当し、イーサリアムのメインネットが取引結果の正当性の確認や最終的な確定を担います。
ロールアップで複数の取引をまとめて処理する仕組み
イーサリアムのメインネットでは、各ノードが取引を検証・実行するため、1つのブロックに含められる処理量に制限があります。すべての取引をメインネットで直接実行するのではなく、一部の処理を別のネットワークに移すことで、この制約を緩和するのがレイヤー2の役割です。
ロールアップでは、利用者が送信した取引をレイヤー2上で実行し、複数の取引を1つのまとまりに集約します。このまとまりは「バッチ」と呼ばれ、取引によって変更された残高やデータの状態を示す情報などとともに、イーサリアムのメインネットに送信されます。
また、ロールアップでは取引データを圧縮し、メインネットにまとめて記録します。データの記録には、通常の取引データ領域のほか、レイヤー2向けに用意された「Blob(ブロブ)」と呼ばれるデータ領域も利用されます。
このように、複数の取引をレイヤー2で処理し、必要なデータをまとめてメインネットに送信することで、個々の取引をメインネットで直接実行する負担を減らしています。
メインネットによって取引結果を検証・確定する仕組み
ロールアップでは、レイヤー2上で取引を処理する一方、その結果の正当性を確認するためにイーサリアムのメインネットを利用します。ただし、メインネットがレイヤー2のすべての取引を最初から実行し直すわけではありません。
取引結果を確認する方法には、主にオプティミスティック・ロールアップとZKロールアップの2種類があります。
オプティミスティック・ロールアップは、提出された取引結果を原則として正しいものと扱い、一定期間内に異議が申し立てられた場合に「不正証明」を使って検証する方式です。不正な処理が確認された場合は、その結果を無効にする仕組みが設けられています。
一方、ZKロールアップは、取引結果が正しいことを示す「有効性証明」と呼ばれる暗号学的な証明を生成し、メインネット上のスマートコントラクトで検証する方式です。証明が正しいと確認された場合に、取引による状態の変更が受け入れられます。
どちらの方式も、レイヤー2で取引を処理しながら、イーサリアムのメインネットを利用して取引結果の正当性を確認する点が共通しています。ただし、検証方法や取引が最終的に確定するまでの条件は異なります。
こうした役割分担によって、イーサリアムはメインネットでの検証・確定の仕組みを活用しながら、ネットワーク全体で処理できる取引量を拡張しています。
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イーサリアムの価格推移と値動きの特徴
イーサリアム(ETH)の価格は、2015年の運用開始以降、大きな上昇と下落を繰り返してきました。2017年には暗号資産市場の拡大とともに価格が急上昇しましたが、2018年には市場全体の低迷を受けて大幅に下落しました。その後、2020年から2021年にかけてはDeFiやNFTの普及を背景に再び上昇し、2022年には金融引き締めや暗号資産市場の混乱によって下落するなど、大きな価格変動を経験しています。
ETHの価格は、ビットコインをはじめとする暗号資産市場全体の動向に加え、イーサリアム上のサービスの利用状況、ネットワークのアップグレード、ETHの新規発行とバーンによる供給量の変化、投資資金の流入などにも影響を受けます。そのため、ネットワーク自体の発展だけでなく、投資家の需要や金融市場の環境も価格を左右する重要な要素となっています。

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イーサリアムのこれまでの価格推移
イーサリアム(ETH)は、2015年の運用開始当初、1ETHあたり1ドル前後の価格で取引されていました。その後、2017年の暗号資産市場の拡大、2020年以降のDeFiやNFTの普及などを背景に大きく上昇しましたが、市場全体の低迷によって価格が急落する局面も経験しています。
2024年には米国でETH現物ETFの取引が始まり、2025年8月には4,900ドルを超える水準まで上昇しました。その後は再び下落し、2026年10月中旬には2,400ドル前後で推移しています。ここでは、価格が大きく変化した局面と、その背景にあった主な出来事を振り返ります。
2017〜2018年|ICOブームによる急騰と市場の低迷
ETHの価格が初めて大きく上昇したのは、2017年の暗号資産市場の拡大期です。イーサリアム上では、独自のトークンを発行して資金を調達するICO(Initial Coin Offering)が広まり、多くの新しいプロジェクトが登場しました。
ICOではETHを使ってトークンを購入する仕組みが広く利用され、ETHへの関心や需要が高まりました。暗号資産市場全体への投資資金の流入も重なり、2017年初めには10ドル未満だったETHの価格は、2018年1月に一時1,400ドル前後まで上昇しました。
しかし、その後は暗号資産市場全体が下落に転じました。ICOをめぐる規制強化やプロジェクトの実現性に対する懸念が広がり、投資資金の流出やETHの売却が進みました。
ETHの価格は2018年12月に一時80ドル台まで下落し、年初の高値から90%以上の下落を記録しました。この時期は、イーサリアム関連のプロジェクトが増えても、投資需要が後退すればETH価格が大幅に下落することを示した局面でした。
2020〜2021年|DeFi・NFTの普及と過去最高値の更新
2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大による金融市場の混乱を受け、ETHの価格は一時100ドル前後まで下落しました。しかし、各国の金融緩和などを背景に暗号資産市場へ資金が戻り始め、その後は上昇に転じました。
特に2020年夏以降は、暗号資産の交換や貸し借りなどを行うDeFi(分散型金融)が急速に普及しました。イーサリアム上のサービスを利用する機会が増え、ネットワークの利用拡大に対する期待がETHへの投資需要を後押ししました。
2021年には、デジタルアートやコレクティブルなどのNFT市場も拡大しました。NFTの売買や関連サービスの利用が増えたことに加え、暗号資産市場全体が強気相場となったことで、ETHの価格上昇が続きました。
同年11月には1ETHあたり4,800ドルを超え、当時の過去最高値を更新しました。DeFiやNFTといったイーサリアム上のサービスの普及と、暗号資産への投資需要の拡大が重なった上昇局面でした。
2022年|金融引き締めと暗号資産市場の混乱による急落
2022年に入ると、米国を中心としたインフレの進行と金融引き締めによって、株式や暗号資産などのリスク資産が売られる展開となりました。ETHも2021年の高値から下落し、価格の低迷が続きました。
さらに同年5月には、暗号資産Terra(LUNA)とステーブルコインUSTの価格が崩壊し、関連する企業やサービスにも影響が広がりました。暗号資産市場全体で信用不安が強まり、ETHは6月に一時1,000ドル前後まで下落しました。
その後、9月に予定されていた「The Merge」への期待から一時的に価格が回復する場面もありましたが、金融引き締めが続く中で上昇は定着しませんでした。11月には大手暗号資産取引所FTXの経営破綻が発生し、市場全体の投資家心理が再び悪化しました。
2022年末のETH価格は1,200ドル前後となり、2021年の高値を大きく下回る水準で推移しました。一方、2023年には市場の落ち着きとともに徐々に回復し、年末には2,000ドルを超える水準まで上昇しました。
2024〜2025年|ETH現物ETFの登場と最高値更新
2024年には、米国でETHを投資対象とする現物ETFの承認に注目が集まりました。ETH価格は同年3月に4,000ドル前後まで上昇し、その後もETFの承認見通しや暗号資産市場全体の動向に反応して大きく変動しました。
同年5月には米国証券取引委員会(SEC)がETH現物ETFの上場に必要な申請を承認し、7月には実際に取引が開始されました。これにより、投資家は暗号資産取引所でETHを直接購入しなくても、証券口座を通じてETHの価格に連動する金融商品へ投資できるようになりました。
2025年前半は市場の調整によってETH価格が一時1,400ドル台まで下落しましたが、その後は反発しました。現物ETFへの資金流入や、ETHを企業の保有資産として購入する動きが広がり、夏にかけて上昇が加速しました。
2025年8月には4,900ドルを超え、2021年に記録した高値を更新しました。ただし、その後は上昇が続かず、年末には3,000ドル前後まで下落しました。ETFを通じた投資需要が拡大しても、価格は市場環境や資金の流出入によって大きく変動する展開となりました。
2026年|前年の最高値からの調整が続く
2026年もETHの価格変動は大きく、年初の3,000ドル前後から下落し、一時1,500ドル台を記録しました。その後は反発する局面もありましたが、2025年8月の最高値を回復するには至っていません。
10月中旬には2,400ドル前後まで下落しており、前年の最高値と比べると半分程度の水準となっています。米国のインフレ動向や金融政策への警戒、暗号資産関連の投資資金の流出入などが、市場の値動きに影響しています。
ETHはこれまで、ネットワークの利用拡大や投資需要の高まりによって大幅に上昇する一方、金融市場の環境が悪化すると大きく下落する動きを繰り返してきました。
イーサリアムの値動きの特徴
イーサリアム(ETH)の価格は、暗号資産市場全体の動向だけでなく、ネットワークの利用状況やETHの需給にも影響を受けます。特に、DeFiなどのサービスの利用拡大、ETHの新規発行とバーン、ステーキングへの参加状況は、ETHの需要や市場に供給される数量に関係する要素です。
また、現物ETFを通じた投資資金の流入やネットワークのアップグレードなども、投資家の期待や売買動向を変化させます。こうした要因がどのようにETHの価格に影響するのかを整理します。
暗号資産市場全体の動向と金融環境の影響
ETHは、ビットコインをはじめとする暗号資産市場全体の動きに影響を受けやすい通貨です。暗号資産市場に投資資金が流入する局面では、ETHも買われやすくなり、反対に市場全体で売却が増える局面では、イーサリアム固有の材料がなくても価格が下落することがあります。
特に、米国の金利政策やインフレ動向は、投資家がリスク資産に資金を振り向けるかどうかに関係します。金融緩和への期待が高まると暗号資産への投資需要が増えることがある一方、金融引き締めや景気悪化への警戒が強まると、ETHを含む暗号資産が売却されやすくなります。
また、大手暗号資産取引所の経営問題や、暗号資産に関する規制・制度の変更なども、市場全体の投資家心理を変化させる要因です。ETHの値動きを考える際には、イーサリアムの開発状況だけでなく、暗号資産市場や金融市場の動向も確認する必要があります。
ネットワークの利用拡大によるETH需要の変化
イーサリアムでは、ETHがネットワーク手数料の支払いに使用されるため、サービスの利用状況がETHの需要に関係します。
例えば、DeFiでの取引やNFTの売買、スマートコントラクトの実行などが増えると、ネットワーク上で処理される取引も増加します。利用者が手数料の支払いに必要なETHを購入する動きが強まれば、ETHへの買い需要が増える要因になります。
また、ネットワークの利用が集中して基本手数料が上昇すると、バーンされるETHの量も増えやすくなります。新規発行量に対してバーン量が増えることは、ETHの供給量を抑える方向に働きます。
ただし、イーサリアム上のサービスが利用されても、必ずETHの購入が増えるわけではありません。DeFiではETH以外のトークンも広く利用されており、既に保有しているETHを使って手数料を支払うこともできます。
さらに、レイヤー2では多くの取引を低コストで処理できるため、取引件数が増えても、メインネットで発生する手数料やETHのバーン量が同じ割合で増えるとは限りません。
ETHの供給量とステーキングによる需給の変化
ETHの価格には、市場に供給されるETHの数量も関係します。イーサリアムでは、新規発行とバーンによって総供給量が変化するため、ETHの需要が同じでも、供給量の増減によって需給のバランスが変わる可能性があります。
例えば、ネットワークの利用が活発になってバーン量が新規発行量を上回れば、ETHの総供給量は減少します。供給量が減少することは、需要が維持されている場合に価格を支える要因となります。反対に、新規発行量がバーン量を上回る状況では、供給量が増加します。
また、ステーキングへの参加状況も、市場で売買できるETHの数量に影響します。ステーキングに使用されているETHは、通常のウォレットに保有しているETHとは異なり、バリデータからの引き出しに所定の手続きが必要です。
ステーキングへの参加が増えると、直ちに売却できるETHが減少する方向に働きます。一方、ステーキングからの退出や報酬の引き出しが増え、そのETHが市場で売却されれば、売り圧力が強まる可能性があります。
ただし、ステーキングされたETHがすべて市場から完全に隔離されるわけではありません。リキッドステーキングでは、預け入れたETHに対応するトークンを売買できる仕組みもあり、実際の売買可能な数量は参加方法によって異なります。
現物ETFやアップグレードによる投資需要の変化
ETHは、現物ETFを通じた投資資金の流入や、ネットワークのアップグレードに対する期待によっても価格が動きます。
米国では2024年にETH現物ETFの取引が始まり、投資家が証券口座からETHの価格に連動する商品へ投資できるようになりました。現物ETHを保有するETFに資金が純流入し、追加のETH購入が必要になる場合は、現物市場での買い需要につながります。反対に、資金の流出に伴って保有ETHが売却されれば、売り圧力となる可能性があります。
また、イーサリアムでは処理能力の拡張や手数料の改善などを目的としたアップグレードが行われています。こうした変更によって利用者や開発者が増え、将来的なネットワークの利用拡大につながると期待されれば、ETHへの投資需要が高まる要因になります。
一方、アップグレードの延期や技術的な問題、暗号資産に関する規制の変更などは、投資家の評価を変化させる要因となります。ETHの価格は、実際に実施された変更だけでなく、市場が抱く期待や評価の変化にも反応します。
ネットワークの成長が価格上昇に直結しない場合
イーサリアムの利用者や取引件数が増えても、それだけでETHの価格上昇が決まるわけではありません。重要なのは、ネットワークの成長がETHの買い需要や供給量にどの程度影響するかという点です。
例えば、レイヤー2の普及によって取引件数が増えても、メインネットへの手数料支払いが大きく増えなければ、ETHのバーン量への影響は限定的になります。また、サービスの利用が拡大しても、ETH自体を新たに購入する需要が十分に増えなければ、価格を押し上げる力は弱くなります。
さらに、ETHの需要が増えていても、大口保有者による売却やETFからの資金流出などによって、それを上回る売り注文が発生すれば価格は下落します。金融市場全体でリスク資産の売却が進んでいる場合も、イーサリアムの成長が価格に反映されにくくなります。
アップグレードについても、実施前から投資家の期待を集めて価格が上昇していた場合、予定どおりに完了しても新たな買い需要につながらず、利益確定の売却によって価格が下落することがあります。
このように、ETHの値動きを考える際には、ネットワークの利用状況や技術的な発展だけでなく、実際のETHの需給と市場全体の投資環境を組み合わせて判断することが重要です。
他通貨との比較
この通貨の特徴をより深く理解するために、異なる通貨である イーサリアム(ETH)、アバランチ(AVAX)、ソラナ(SOL) と比較してみましょう。それぞれの将来性や価格変動の傾向、初心者への適性を5段階で評価しています。興味のある通貨があれば、各リンクから詳しい辞書ページもあわせてご覧ください。
※この比較表は、2026年時点での情報や市場状況をもとに、初心者の方にもわかりやすく評価したものです。実際の投資判断は、ご自身の目的やリスク許容度に応じて行ってください。
| 比較通貨 | ETH | AVAX | SOL |
|---|---|---|---|
| 辞書リンク | ー | 辞書へ→ | 辞書へ→ |
| 主な用途 | スマートコントラクト | dApp・DeFi | dApp・DeFi |
| ネットワーク内での役割 | ガス代・担保 | ガス代・ステーキング | ガス代・ステーキング |
| 承認方式 | 発行継続・焼却あり | Avalanche | PoH+PoS |
| 供給設計 | PoS | 上限あり・バーン | 発行継続 |
| 将来性 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★★ |
| 価格変動性 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 初心者向け | ★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
比較表で紹介した3通貨のうち、イーサリアムとSOL(ソラナ)については、両者の違いをさらに詳しく比較した記事もあります。 処理速度や手数料、用途などの違いを詳しく知りたい場合は、SolanaとEthereumの違いとは?速度・手数料・用途・リスクを比較もあわせて確認してみてください。
イーサリアムは何に使われる?
イーサリアムは、暗号資産ETHの送金・決済だけでなく、分散型金融(DeFi)やNFTなど、さまざまなサービスを提供するための基盤として利用されています。ETH自体は、ネットワーク手数料(ガス代)の支払いやステーキング、投資・保有などにも使用されます。
このように、イーサリアムの用途は、暗号資産ETHそのものを利用するものと、ブロックチェーン上のサービスを利用するものに分けられます。主な用途は次のとおりです。
イーサリアムの主な用途
- 個人や企業間での送金・決済
- ネットワーク手数料(ガス代)の支払い
- ステーキングによるネットワークの維持
- DeFiでの取引・貸し借り・担保としての利用
- NFTの発行・売買とデジタル資産の管理
- 投資・保有の対象

どういう場面で使われるか気になる方は、下記をクリックしてね↓
個人や企業間での送金・決済
イーサリアムの暗号資産ETHは、個人間の送金や、商品・サービスの代金を支払う決済手段として利用できます。銀行口座を経由せず、送金先のウォレットアドレスを指定することで、国内外の相手にETHを直接送ることができます。
また、ETHでの支払いに対応している店舗やオンラインサービスでは、商品購入やサービス利用の代金としてETHを使用できます。送金や決済の取引はブロックチェーンに記録され、相手が受け取ったことを確認できます。
ウォレットを利用した個人間・企業間の送金
ETHを送金する際は、送金先のウォレットアドレスと送金数量を指定し、取引を承認します。送金先のアドレスは「0x」から始まる英数字で構成されており、ウォレットの送金画面に入力したり、QRコードを読み取ったりして指定できます。
例えば、個人間でETHを受け渡す場合や、海外の取引先にETHで報酬を支払う場合などに利用できます。受取側は対応するウォレットを用意することで、銀行の営業時間や国境に関係なくETHを受け取れます。
ただし、送金する際には、相手が指定したネットワークと受取アドレスを正しく確認する必要があります。また、送金時にはネットワーク手数料が発生し、取引の処理にかかる時間もネットワークの状況によって変わります。
商品やサービスの代金としてETHを支払う
ETHは、暗号資産決済に対応した店舗やオンラインサービスで、商品・サービスの代金を支払うためにも利用できます。
例えば、オンラインサービスの利用料金やデジタル商品の購入代金をETHで支払う場合、販売者が提示するウォレットアドレスに指定された数量を送金することで決済できます。暗号資産決済サービスを導入している事業者では、購入画面に表示されたQRコードなどから支払いを行うこともできます。
ただし、ETHでの決済に対応しているサービスは限られており、すべての店舗や企業で利用できるわけではありません。また、ETHの価格は変動するため、日本円などで表示された商品価格に対して、支払いに必要なETHの数量が変わることがあります。
ネットワーク手数料(ガス代)の支払い
イーサリアムの暗号資産ETHは、ネットワーク上で取引を実行する際の手数料(ガス代)の支払いに使用されます。ETHの送金だけでなく、トークンの移転やスマートコントラクトの操作など、ブロックチェーンの状態を変更する取引でもガス代が発生します。
そのため、イーサリアムのメインネットでサービスを利用する際は、ETH以外のトークンを扱う場合でも、通常は手数料を支払うためのETHをウォレットに用意する必要があります。
ETHや各種トークンの送金に使用する
ETHを別のウォレットに送金する際は、送金するETHとは別に、ネットワーク手数料としてETHが必要です。例えば、ウォレットに保有しているETHをすべて送金したい場合でも、手数料として支払う分を残しておかなければなりません。
また、イーサリアム上で発行されたERC-20トークンを送金する場合にも、通常はETHでガス代を支払います。例えば、ステーブルコインのUSDCを別のウォレットへ送る場合、送金する資産はUSDCですが、その取引を実行するための手数料にはETHが使用されます。
このように、ETHは自身を送金するためだけでなく、イーサリアム上で発行されたさまざまなトークンを移転する際にも必要となります。
DeFiやNFTなどのサービスを操作する際に使用する
イーサリアム上の分散型アプリケーションでも、スマートコントラクトを実行する取引にはガス代が発生します。
例えば、DeFiの分散型取引所でトークンを交換する場合や、レンディングサービスに暗号資産を預け入れる場合には、スマートコントラクトに対して取引を送信するため、通常はETHでガス代を支払います。
NFTを新しく発行する「ミント」や、保有しているNFTを別のウォレットへ移転する場合も同様です。また、開発者が新しいスマートコントラクトをネットワークに公開する際にも、手数料としてETHが使用されます。
一方、トークンの残高やNFTの所有者など、ブロックチェーンに記録された情報を読み取るだけの操作では、通常ガス代は発生しません。ETHが必要になるのは、主に取引を送信してネットワーク上の状態を変更する場面です。
なお、ウォレットやサービスによっては、利用者に代わって手数料を負担する仕組みもあります。また、レイヤー2では手数料の支払いに使用する通貨がネットワークによって異なる場合があります。
ステーキングによるネットワークの維持
イーサリアムの暗号資産ETHは、ネットワークの安全性を維持するためのステーキングに利用できます。ステーキングとは、ETHをネットワークに預け入れ、取引の検証などに参加することで報酬を受け取る仕組みです。
参加方法には、自分でバリデータを運用する方法と、外部のステーキングサービスを利用する方法があります。必要なETHの数量や管理の手間、報酬の受け取り方などが異なるため、保有数量や利用目的に応じて参加方法を選べます。
自分でバリデータを運用してステーキングする
自分でバリデータを運用する方法は、ソロステーキングと呼ばれます。イーサリアムのネットワークに直接参加する方法で、原則として最低32ETHを用意し、バリデータを稼働させるための機器やソフトウェアを準備します。
バリデータの運用を開始した後は、ネットワークへの参加状況に応じてETHの報酬を受け取れます。外部サービスに運用を委託する必要がないため、バリデータの管理方針や資産の管理に関する権限を自分で保持できることが特徴です。
一方、バリデータを継続して稼働させるには、安定したインターネット接続や機器の管理、ソフトウェアの更新などが必要です。長時間の停止や不適切な運用によってETHが減少することもあるため、技術的な知識と継続的な管理が求められます。
ステーキングサービスを利用して参加する
自分でバリデータを運用することが難しい場合は、外部のステーキングサービスを利用する方法もあります。サービスによっては、専門の事業者にバリデータの運用を任せたり、ほかの利用者のETHとまとめてステーキングしたりできます。
例えば、ステーキング・アズ・ア・サービスと呼ばれる方式では、自分で32ETHを用意し、バリデータの運用を専門事業者に委託します。利用者は機器の管理やソフトウェアの運用を任せながら、ステーキング報酬を受け取れます。
また、複数の利用者がETHを持ち寄るプールステーキングでは、32ETH未満の少額から参加できるサービスもあります。利用者が預けたETHをまとめて運用し、それぞれの参加数量やサービスの条件に応じて報酬を分配する仕組みです。
暗号資産取引所が提供するステーキングサービスを利用する方法もあります。対応している取引所では、ETHを保有したり、所定の申し込みを行ったりすることで、バリデータを自分で運用せずに報酬を受け取れる場合があります。
ただし、外部サービスを利用する場合は、報酬から手数料が差し引かれることや、ETHの引き出しに制限が設けられることがあります。また、事業者による資産管理やスマートコントラクトの不具合など、サービス固有のリスクもあるため、利用条件を確認することが重要です。
ステーキング報酬の受け取りとETHの引き出し
ステーキングで得られる報酬は、ネットワーク全体でステーキングされているETHの数量や、バリデータの運用状況などによって変化します。そのため、報酬率は一定ではなく、将来にわたって同じ数量のETHを受け取れるとは限りません。
ソロステーキングでは、バリデータの設定に応じて報酬が引き出し先に送られたり、ステーキング残高に加算されたりします。ステーキングを終了してETHを引き出す場合は、ネットワーク上で退出手続きを行う必要があり、混雑状況によって引き出しまでの時間が変わります。
一方、ステーキングサービスでは、報酬の付与頻度や引き出し条件が事業者ごとに異なります。預け入れたETHに対応するトークンを受け取り、そのトークンを売却することで資金化できるサービスもあります。
このように、ETHのステーキングはネットワークの維持に貢献しながら報酬を得られる用途ですが、参加方法によって資産の管理方法や引き出し条件が異なります。
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DeFiでの取引・貸し借り・担保としての利用
イーサリアムでは、DeFi(分散型金融)と呼ばれる金融サービスを利用できます。DeFiは、スマートコントラクトを活用して、暗号資産の交換や貸し借りなどを行う仕組みです。利用者は対応するウォレットを接続することで、銀行や暗号資産取引所などの仲介機関を介さずに取引できます。
DeFiでは、ETHをほかの暗号資産と交換したり、貸し出して利息を得たり、借り入れの担保として利用したりできます。また、イーサリアム上ではETHだけでなく、USDCなどのステーブルコインや、さまざまなERC-20トークンも取引や貸し借りに使用されています。
分散型取引所での暗号資産の交換
イーサリアム上の分散型取引所(DEX)では、ETHをほかの暗号資産と交換できます。例えば、ETHを米ドルに価値が連動するステーブルコインのUSDCに交換したり、反対にUSDCを使ってETHを取得したりできます。
多くのDEXでは、利用者などが暗号資産を預け入れた「流動性プール」を利用して交換が行われます。利用者はウォレットから交換する通貨と数量を指定し、提示された交換条件を確認して取引を実行します。
なお、DeFiではETHをERC-20トークンとして扱えるようにしたWETH(Wrapped ETH)も広く利用されています。WETHは、ETHを専用のスマートコントラクトに預け入れることで、同じ数量だけ発行されるトークンです。
ETHそのものはERC-20規格に対応していないため、ERC-20トークンを扱う取引ではWETHが利用されます。サービスによっては、利用者がETHを指定するだけで、交換に必要なWETHへの変換を自動的に処理する仕組みもあります。
ETHを貸し出して利息を受け取る
DeFiのレンディングサービスでは、保有する暗号資産を貸し出し、利息を受け取ることができます。例えば、ETHをWETHとしてレンディングサービスの流動性プールに預け入れ、ほかの利用者への貸し出しに利用してもらう方法があります。
貸し出した資産は、サービスの仕組みに従って借り手へ提供され、利用者は預け入れた数量や適用される金利に応じた利息を受け取ります。金利は資産の貸し出し需要やプール内の利用状況などによって変動します。
また、ETH以外にも、USDCなどのステーブルコインや対応するERC-20トークンを貸し出せるサービスがあります。利用者は保有している暗号資産の種類や貸し出し条件に応じて、利用するサービスを選べます。
ただし、DeFiでの貸し出しは、ネットワークの維持に参加するステーキングとは異なります。利息は主に借り手の支払う金利を原資としており、スマートコントラクトの不具合や流動性の不足などによって、資産を引き出せなくなるリスクもあります。
ETHを担保にしてほかの暗号資産を借り入れる
DeFiでは、保有するETHを担保として預け入れ、別の暗号資産を借り入れることもできます。例えば、ETHを売却せずに担保として利用し、USDCなどのステーブルコインを借りる方法があります。
借り入れでは、通常、預け入れた担保の評価額よりも少ない金額の資産を借りる仕組みが採用されています。例えば、1,000ドル相当のETHを担保にした場合でも、1,000ドル分をそのまま借りられるわけではなく、サービスが設定する担保条件に応じて借入可能額が決まります。
借りた暗号資産は、ほかの暗号資産との交換やDeFiサービスでの利用などに活用できます。借入金と発生した利息を返済すれば、原則として担保に預け入れたETHを引き出せます。
一方、担保にしたETHの価格が下落すると、借入額に対する担保の価値が不足することがあります。一定の基準を下回った場合には、担保の一部または全部が強制的に売却される「清算」が発生するため、借り入れ後も担保の評価額や借入状況を確認する必要があります。
NFTの発行・売買とデジタル資産の管理
イーサリアムは、デジタルアートやゲームアイテムなどをNFT(非代替性トークン)として発行・管理するために利用されています。NFTは、それぞれのトークンを個別に識別できる仕組みを持ち、誰が保有しているのかをブロックチェーン上に記録できます。
発行されたNFTは、対応するウォレットで保有したり、マーケットプレイスで売買したりできます。また、NFTの保有状況を確認できるため、ゲーム内のアイテムやデジタルコンテンツに関連する権利・利用資格の管理などにも活用されています。
デジタルアートやゲームアイテムをNFTとして発行する
イーサリアムでは、デジタル作品などに対応するNFTを新しく発行できます。この発行作業はミント(Mint)と呼ばれ、スマートコントラクトを通じて、新しいNFTを作成し、指定されたウォレットに割り当てます。
例えば、デジタルアートの制作者は、自分の作品に対応するNFTを発行できます。NFTには作品名や説明、画像データの参照先などを関連付けることができ、購入者は対応するウォレットでNFTを保有できます。
また、ブロックチェーンゲームでは、キャラクターや装備品、カードなどのアイテムをNFTとして発行することがあります。利用者は取得したNFTをウォレットで管理し、対応するゲーム内で使用したり、ほかの利用者と取引したりできます。
なお、NFTの発行によって画像やゲームデータそのものが必ずブロックチェーンに保存されるわけではありません。実際には、画像などを外部の保存先に置き、その参照情報をNFTに関連付ける方法も利用されています。
マーケットプレイスでNFTを売買・移転する
発行されたNFTは、対応するマーケットプレイスを通じて売買できます。マーケットプレイスはNFTの出品や購入を行うサービスで、イーサリアム上ではOpenSeaなどが知られています。
例えば、保有しているデジタルアートのNFTを売却する場合、利用者はウォレットをマーケットプレイスに接続し、販売価格などの条件を設定して出品します。購入者が提示された条件で取引を成立させると、NFTが購入者のウォレットへ移転します。
NFTの売買にはETHやWETHなどが使用されますが、対応する決済通貨はマーケットプレイスや出品条件によって異なります。また、売買を伴わず、保有しているNFTを別のウォレットへ直接送ることもできます。
こうしたNFTの移転はブロックチェーン上に記録されるため、取引後にどのウォレットがNFTを保有しているのかを確認できます。
ウォレットでNFTの保有状況を管理する
イーサリアム上で発行されたNFTは、対応するウォレットを使って管理できます。利用者は、自分のウォレットアドレスに紐づくNFTを確認し、対応するサービスで表示したり、別のアドレスに移転したりできます。
NFTごとに識別情報が設定されているため、同じシリーズのNFTでも、それぞれのトークンを区別して管理できます。また、ブロックチェーン上の記録から、現在の保有者や過去の移転履歴を確認することも可能です。
この仕組みは、デジタルアートやゲームアイテムだけでなく、イベントの参加証明や会員資格などにも利用されています。例えば、特定のNFTを保有しているウォレットだけに、限定コンテンツへのアクセスを認めるサービスを構築できます。
ただし、NFTを保有することと、関連する作品の著作権を取得することは同じではありません。NFTによって認められる利用権限は、発行元の規約やライセンスなどによって異なります。
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投資・保有の対象
イーサリアムの暗号資産ETHは、価格の変動を利用した売買や、将来的な価値の上昇を期待した長期保有など、投資対象としても利用されています。国内の暗号資産取引所などで日本円を使って購入でき、保有するETHは市場価格に応じて売却することも可能です。
ETHへの投資方法には、短期間の価格変動を利用して利益を狙う売買や、イーサリアムの長期的な成長を期待して保有を続ける方法があります。投資する期間や目的に応じて、売買の頻度や保有方法を選べます。
短期的な価格変動を利用した売買
ETHは暗号資産取引所などで継続的に売買されており、短期的な価格変動を利用した投資の対象となっています。例えば、ETHの価格が下落したタイミングで購入し、その後の上昇時に売却することで、売買価格の差から利益を得ることを目指します。
売買の方法には、同じ日のうちに取引を完了するデイトレードや、数日から数週間程度の値動きを狙うスイングトレードなどがあります。利用者は取引所の価格チャートや注文機能を活用し、売買する価格や数量を決めて取引します。
また、ETHは24時間365日取引される暗号資産市場で売買できるため、株式市場のような決まった取引時間に限定されず、価格の変化に応じた売買が可能です。ただし、取引所ごとのメンテナンス時間や取引停止などによって、一時的に売買できない場合もあります。
短期売買では、価格が予想と反対に動くと損失が発生します。また、売買の回数が増えるほど取引手数料や売買価格の差によるコストも積み重なるため、取引条件を確認する必要があります。
イーサリアムの成長を期待した長期保有
ETHは、イーサリアムのネットワークや関連サービスの成長を期待して、長期間保有する投資にも利用されています。
イーサリアムはDeFiやNFTなどのサービスを支える基盤として利用されており、今後もネットワークの利用やエコシステムが拡大することで、ETHへの需要が高まると期待する投資家もいます。
長期保有では、短期的な価格変動に合わせて頻繁に売買するのではなく、数か月から数年単位でETHを保有する方法が考えられます。また、一度にまとまった数量を購入するだけでなく、毎月など一定の間隔で少しずつ買い増していく積立投資も選択肢の1つです。
購入したETHは、暗号資産取引所の口座に保有するほか、自分で管理するウォレットへ移して保管することもできます。保管方法によって資産の管理主体や必要な手続きが異なるため、長期保有では管理方法も重要になります。
なお、イーサリアムのネットワークが成長しても、ETHの価格が必ず上昇するわけではありません。長期間保有している間に価格が大きく下落する可能性もあるため、投資期間や保有数量を考慮して利用する必要があります。
イーサリアムの長所
イーサリアムの大きな長所は、多くの開発者やサービスが集まるエコシステムと、既存のスマートコントラクトやトークンを組み合わせて新しいサービスを構築しやすいことです。開発者は幅広い技術やツールを活用でき、利用者も多様なアプリケーションを利用できる環境が整っています。
また、レイヤー2の活用による取引コストの削減や、Proof of Stake(PoS)への移行による消費電力の大幅な削減も実現しています。2015年の運用開始から大規模なアップグレードを重ね、ネットワークの改良を続けてきた実績も強みです。イーサリアムには、主に次のような長所があります。
イーサリアムの主な長所
- 多くの開発者とサービスが集まる大規模なエコシステム
- スマートコントラクトやトークンを組み合わせやすい
- レイヤー2を活用して取引コストを抑えられる
- Proof of Stakeへの移行で消費電力を大幅に削減
- 長期間の運用と継続的なアップグレードの実績

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多くの開発者とサービスが集まる大規模なエコシステム
イーサリアムの大きな長所は、世界中の開発者が参加し、さまざまなアプリケーションや開発ツールが集まる大規模なエコシステムが形成されていることです。
2015年の運用開始以来、イーサリアム上ではDeFiやNFTをはじめとする多くのサービスが開発され、それらを支えるウォレットや開発環境も充実してきました。そのため、開発者は既存の技術を活用して新しいサービスを構築しやすく、利用者も幅広いサービスから目的に合ったものを選べます。
豊富な開発ツールや技術情報を活用できる
イーサリアムでは、長年にわたる開発活動を通じて、スマートコントラクトの作成や動作確認、ネットワークへの公開などを支援するツールが数多く整備されています。
例えば、HardhatやFoundryは、スマートコントラクトの開発やテスト、デプロイに利用される代表的なツールです。また、OpenZeppelin Contractsでは、トークンの発行やアクセス権限の管理などに利用できるプログラム部品が公開されています。
開発者は、こうしたツールやライブラリを活用することで、必要な機能をすべて独自に開発する負担を減らせます。また、公式ドキュメントや技術解説、サンプルコードなども豊富に公開されており、開発中の問題を調査したり、既存の実装方法を参考にしたりしやすい環境が整っています。
このように、開発に必要な技術や情報が蓄積されていることは、新しいプロジェクトがイーサリアムを採用する際の負担を減らし、サービス開発を進めやすくする強みとなっています。
既存のウォレットや多様なサービスを利用できる
イーサリアムには、ウォレット、分散型取引所、レンディングサービス、NFTマーケットプレイスなど、さまざまな用途に対応したサービスが存在します。利用者は、目的に応じて複数のサービスを選び、使い分けることができます。
例えば、MetaMaskなどの対応ウォレットを用意すれば、分散型取引所のUniswapで暗号資産を交換したり、Aaveで暗号資産を貸し借りしたりできます。また、対応するNFTマーケットプレイスに同じウォレットを接続して、NFTを管理・取引することも可能です。
これらのサービスでは、利用者が自分のウォレットを通じて資産を管理できるため、サービスごとに新しくウォレットを作成する必要がありません。対応する資産やネットワークの範囲内で、同じウォレットを複数のサービスに利用できます。
さらに、イーサリアム上には多くの暗号資産や取引サービスが存在するため、利用者は売買したいトークンや希望する取引条件に応じて利用先を選べます。複数のサービスやウォレットが利用できる環境は、特定のサービスだけに依存せず、自分に合った利用方法を選びやすいというメリットにつながります。
スマートコントラクトやトークンを組み合わせやすい
イーサリアムの長所の1つは、既存のスマートコントラクトやトークンを組み合わせて、新しいサービスを構築しやすいことです。この性質はコンポーザビリティ(組み合わせ可能性)と呼ばれ、異なる開発者が作成した機能を連携させられることを意味します。
例えば、暗号資産の交換機能と貸し借りの機能を組み合わせれば、複数の金融操作を連続して実行するサービスを構築できます。既存の機能を活用して開発負担を減らせるだけでなく、利用者にとっても、複数のサービスを組み合わせた便利な機能を利用できることがメリットです。
既存のスマートコントラクトを新しいサービスに組み込める
イーサリアムでは、公開されているスマートコントラクトの機能を、別のスマートコントラクトから呼び出すことができます。そのため、開発者は必要な機能をすべて独自に作成するのではなく、既存のサービスが提供する機能を組み込んで新しいアプリケーションを構築できます。
例えば、暗号資産の交換機能を備えたサービスを開発する場合、分散型取引所Uniswapのスマートコントラクトを利用すれば、交換処理の仕組みを最初から開発する必要がありません。
さらに、独自の資産管理機能や取引条件を追加することで、既存の交換機能を活用しながら、異なる目的を持つサービスを作成できます。
このように、個別のスマートコントラクトを部品のように組み合わせられるため、開発者は既存の機能を再利用しながら、新しいサービスの独自機能の開発に集中できます。
DeFiの複数の機能を連携させて利用できる
スマートコントラクトの組み合わせは、特にDeFi(分散型金融)で活用されています。暗号資産の交換、貸し出し、借り入れ、担保管理など、それぞれ異なる機能を持つサービスを連携させることで、複数の金融操作を組み合わせられます。
例えば、ETHを担保としてステーブルコインのUSDCを借り入れ、そのUSDCを別の暗号資産に交換する処理を考えます。通常は借り入れと交換を別々に操作しますが、対応するスマートコントラクトを組み合わせれば、これらを一連の操作として実行するサービスを構築できます。
さらに、同じネットワーク上の複数のスマートコントラクトを1つの取引から呼び出すことで、複数の処理をまとめて実行することも可能です。このとき、すべての処理が成功した場合だけ結果を反映し、途中で失敗した場合は取引全体を取り消すように設計できます。
こうした仕組みによって、利用者が複数のサービスを個別に操作する手間を減らし、複雑な金融取引をまとめて実行できるアプリケーションを提供できます。
同じトークンを活用できるサービスの選択肢が広がる
イーサリアムでは、1つのトークンを特定のアプリケーションだけに限定せず、複数のサービスで利用できることも長所です。保有する資産を変更しなくても、目的に合わせて利用先を選びやすくなります。
例えば、ステーブルコインのUSDCは、対応する分散型取引所で暗号資産との交換に使えるほか、レンディングサービスに預けたり、借り入れの担保として利用したりできます。保有者は同じUSDCを使いながら、取引や資金運用などの異なる用途を選択できます。
開発者にとっても、すでに多くの利用者が保有しているトークンを新しいサービスで扱えることは利点です。独自トークンの発行を前提にしなくても、既存資産を使った決済や金融サービスなどを提供でき、利用者が新しい機能を試しやすい環境につながります。
このように、既存のスマートコントラクトを組み合わせる仕組みに加え、同じ資産を異なるサービスで活用できることが、イーサリアム上で新しいアプリケーションを生み出しやすい理由の1つです。
レイヤー2を活用して取引コストを抑えられる
イーサリアムは、レイヤー2(L2)を利用することで、メインネットよりも低い手数料で取引できることが長所です。ETHの送金やトークンの交換、スマートコントラクトの操作などを、より少ない費用で行えるようになります。
代表的なレイヤー2には、Arbitrum、Optimism、Baseなどがあります。これらのネットワークでは、複数の取引をまとめて処理することで、イーサリアムのメインネットに支払う費用を分担し、利用者1人あたりの取引コストを抑えています。
複数の取引でメインネットへの記録費用を分担できる
レイヤー2で取引コストを抑えられる主な理由は、複数の取引をまとめて処理し、メインネットへの記録に必要な費用を多くの利用者で分担できるためです。
例えば、100件の取引をメインネットで個別に処理する場合、それぞれの取引でネットワーク手数料が発生します。一方、ロールアップ方式のレイヤー2では、100件の取引をまとめて処理し、その結果や必要なデータをメインネットに送信します。
このとき、メインネットへの記録に必要な費用を複数の取引で分担できるため、利用者1人あたりの負担を小さくできます。さらに、取引データの圧縮や、通常の取引データより低コストで記録できる「Blob」の活用によって、費用を抑えやすくなっています。
こうした仕組みにより、イーサリアムのメインネットを活用しながら、利用者が支払う取引手数料を削減できることがレイヤー2の強みです。
少額送金やDeFiなどを低コストで利用できる
レイヤー2による手数料の削減は、特に少額の送金や、取引を繰り返すサービスでメリットがあります。
例えば、少額のETHを送金する場合、手数料が高いと送金額に対する負担が大きくなります。レイヤー2を利用して手数料を抑えられれば、少額の資産移動や、対応サービスでの支払いなども行いやすくなります。
また、DeFiでは暗号資産の交換や預け入れ、引き出しなど、複数の操作を行うことがあります。操作するたびに手数料が発生するため、1回あたりの費用を削減できれば、少額での取引や頻繁な資産の移動にも利用しやすくなります。
NFTの発行や移転、ブロックチェーンゲームなどでも同様です。繰り返し発生する操作の手数料を抑えることで、利用者の費用負担を減らし、さまざまなサービスを利用しやすくなります。
このように、レイヤー2はイーサリアムの用途を広げるうえでも重要な役割を持っています。実際の手数料は利用するネットワークや混雑状況などによって異なりますが、メインネットより低コストで取引できる選択肢があることは、イーサリアムの大きなメリットです。
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Proof of Stakeへの移行で消費電力を大幅に削減
イーサリアムは、2022年9月の「The Merge」で取引承認方式をProof of Work(PoW)からProof of Stake(PoS)へ移行したことで、ネットワークの消費電力を99.9%以上削減しました。
従来のPoWでは、大量の計算処理を行うマイニング機器が必要でしたが、PoSではETHをステーキングしたバリデータが取引の検証を担当します。これにより、大規模なマイニング設備を稼働させる必要がなくなり、ネットワーク全体の電力消費を大幅に減らすことができました。
マイニングに必要だった大量の電力を削減
PoWを採用していた頃のイーサリアムでは、マイナーと呼ばれる参加者が高性能なコンピューターを使って計算処理を競い合い、新しいブロックを生成していました。
マイニングでは、計算能力を高めるほどブロック生成に成功する可能性が高くなるため、多数の機器を稼働させる必要がありました。さらに、機器の動作だけでなく、発生する熱を冷却するためにも電力が消費されていました。
PoSへの移行後は、こうした計算競争が不要になりました。バリデータは一般的なコンピューターでも運用できるため、マイニング専用の大規模な計算設備を用意する必要がありません。
特に重要なのは、ネットワークの安全性を維持するために、大量の電力を消費し続ける必要がなくなったことです。これにより、ネットワークの運用に必要な電力を大幅に削減できました。
移行前後の比較で電力消費量が99.988%減少
暗号資産の環境負荷を調査するCrypto Carbon Ratings Institute(CCRI)は、2022年のThe Merge前後におけるイーサリアムの電力消費量を推計しています。
この調査によると、ネットワーク全体の年間電力消費量は、PoW時代の約22.9TWhから、PoS移行後は約0.0026TWhへと減少しました。これは約99.988%の削減に相当します。
| 比較項目 | PoW(移行前) | PoS(移行後) |
|---|---|---|
| 年間電力消費量 | 約22.9TWh | 約0.0026TWh |
| 年間CO2排出量 | 約1,102万トン | 約870トン |
※CCRIが2022年に公表した推計値をもとに作成。年間電力消費量とCO2排出量は、移行前後のネットワーク構成をもとに年換算した数値です。
電力消費量の削減に伴い、ネットワークの運用によって発生するCO2排出量も約99.992%減少したと推計されています。
このように、イーサリアムは取引の検証やスマートコントラクトの実行といった機能を維持しながら、ネットワーク運用に必要な電力を大幅に削減しました。大規模なブロックチェーンで取引承認方式を変更し、省電力化を実現したことは、イーサリアムの重要な長所となっています。
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長期間の運用と継続的なアップグレードの実績
イーサリアムの長所の1つは、2015年の運用開始から10年以上にわたりネットワークを運用しながら、大規模な技術変更や機能改善を実現してきたことです。
ブロックチェーンでは、多数の参加者が共通のルールに従って取引を処理しているため、ネットワーク全体の仕様を変更するには、開発者やノード運営者などの協力が必要です。イーサリアムは、取引承認方式の変更や処理能力の拡張などを実施してきたことで、既存のネットワークを維持しながら技術を進化させられる実績を持っています。
既存の資産やサービスを維持しながら機能を更新してきた
イーサリアムでは、多くの利用者が資産を保有し、さまざまなアプリケーションが稼働する中でも、ネットワークの基本機能を更新してきた実績があります。
代表例がThe Mergeです。取引承認方式を大きく変更しながら、利用者のETH残高や既存のスマートコントラクトを引き継ぎました。また、その後のアップグレードでも、レイヤー2向けのデータ処理能力やアカウント機能などを拡張しています。
こうした実績は、開発者やサービス運営者にとって重要です。稼働中のサービスや利用者の資産を維持しながら、新しい技術を段階的に取り入れられるため、既存のエコシステムを活用した継続的な開発を検討しやすくなります。
このように、既存の利用環境を引き継いで機能を拡張してきた経験は、新しい技術を取り入れながらネットワークを運用し続けるための基盤となっています。
変更内容を事前に検証し、サービス側でも対応を準備できる
イーサリアムでは、アップグレードの技術仕様や議論の内容が公開されています。そのため、ウォレットやDeFiなどの開発者は、将来の変更が自分たちのサービスに与える影響を早い段階から調べられます。
例えば、取引の形式や手数料の扱いが変わる場合、サービス運営者はテストネットで新しい仕様への対応を確認できます。導入前に不具合を見つけたり、必要なプログラムの修正を進めたりできることは、継続してサービスを提供するうえでの利点です。
また、イーサリアムには複数のクライアントソフトウェアが存在します。異なる実装で同じ仕様が正しく動作するかを検証することは、アップグレード時の不具合を減らし、特定のソフトウェアだけに依存しない運用を支えます。
このように、技術変更を事前に把握して検証できる環境と、長年の運用で蓄積された開発経験が、既存サービスを維持しながら改良を続けるうえでの強みとなっています。
イーサリアムの課題・注意点
イーサリアムには、メインネットで処理できる取引数に限りがあり、利用が集中するとネットワーク手数料(ガス代)が高騰しやすいという課題があります。また、DeFiなどで利用されるスマートコントラクトの不具合や脆弱性によって、資産を失うリスクもあります。
さらに、レイヤー2ごとの安全性や資産移動の条件の違い、ステーキングの一部事業者への集中、取引順序を利用した不利な取引などにも注意が必要です。これらの課題に対しては、ネットワークのアップグレードや技術開発による改善が進められていますが、利用者自身も仕組みやリスクを理解しておくことが重要です。イーサリアムには、主に次のような課題・注意点があります。
イーサリアムの主な課題・注意点
- メインネットで処理できる取引数に限りがある
- ネットワーク混雑時にガス代が高騰しやすい
- スマートコントラクトの不具合や脆弱性によって資産を失う可能性がある
- レイヤー2によって安全性や利用条件が異なる
- ステーキングされたETHが一部の事業者に集中する可能性がある
- 取引順序を利用した不利な取引が発生することがある

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メインネットで処理できる取引数に限りがある
イーサリアムのメインネットには、一定時間内に処理できる取引量に限りがあります。ETHの送金やスマートコントラクトの実行など、多くの取引が同時に発生すると、すべての取引をすぐに処理できず、承認までの待ち時間が長くなることがあります。
この制約に対して、イーサリアムではブロックに含められる処理量の拡大や、取引処理の効率化が進められています。また、レイヤー2を利用してメインネットの負担を減らす方法も採用されていますが、メインネット自体の処理能力には引き続き制限があります。
ブロックのガス上限による処理能力の制約
イーサリアムでは、約12秒ごとに新しいブロックを提案する仕組みが採用されています。ただし、1つのブロックに無制限の取引を含められるわけではありません。
各ブロックには「ブロックガスリミット」と呼ばれる処理量の上限が設定されています。ETHの送金やスマートコントラクトの実行では、それぞれ一定量のガスを消費するため、ブロックに含められる取引の合計ガス使用量は、この上限を超えることができません。
例えば、通常のETH送金は基本的に21,000ガスを使用しますが、複雑なスマートコントラクトの実行では、さらに多くのガスを使用します。そのため、同じブロックガスリミットでも、取引内容によって処理できる件数が変わります。
取引の需要がブロックに含められる処理量を上回ると、一部の取引は後続のブロックに持ち越されます。利用者が集中する状況では、取引の承認を待つ時間が長くなりやすくなります。
処理能力の拡張にはノードの負担も考慮する必要がある
ブロックガスリミットを引き上げれば、1つのブロックで実行できる処理量を増やせます。しかし、上限を大きくするだけでは、ネットワーク全体の処理能力を安全に拡張できるとは限りません。
イーサリアムでは、ネットワークに参加するノードがブロック内の取引を検証します。1つのブロックで実行する処理が増えると、検証に必要な計算能力やメモリ、データの保存容量などの負担も大きくなる可能性があります。
ノードの運用に高性能な機器が必要になれば、十分な設備を持たない参加者がネットワークを維持しにくくなります。その結果、ノードの運用者が限られ、ネットワークの分散性に影響するおそれがあります。
そのため、イーサリアムでは取引処理を高速化するだけでなく、一般的な機器でもノードを運用し続けられることを重視しながら、処理能力の拡張が検討されています。
ガス上限の引き上げと処理の効率化による改善
イーサリアムでは、メインネットの処理能力を高めるために、ブロックガスリミットの引き上げや、ノードが取引を実行・検証する処理の効率化が進められています。
2025年には、ネットワークの参加者による調整を通じて、ブロックガスリミットが約3,000万から6,000万ガスへ引き上げられました。これにより、1つのブロックで実行できる処理量が増加しました。
また、開発者はノードの処理性能を測定し、特に計算負荷の大きい操作を特定することで、処理効率の改善に取り組んでいます。ブロック内の処理を効率よく実行できるようにする技術なども研究・開発されています。
さらに、メインネットですべての取引を直接処理するのではなく、一部をレイヤー2で実行することで、ネットワーク全体の処理能力を拡張する取り組みも進められています。
ただし、レイヤー2の活用によってメインネット自体の処理量の上限がなくなるわけではありません。今後も、ノードの運用負担やネットワークの安全性、分散性とのバランスを取りながら、段階的に処理能力を改善していく必要があります。
ネットワーク混雑時にガス代が高騰しやすい
イーサリアムでは、取引の需要が集中すると、ネットワーク手数料(ガス代)が高騰することがあります。特に、DeFiやNFTなどのサービスで多くの利用者が同時に取引を行うと、送金やスマートコントラクトの実行に必要な費用が増加しやすくなります。
ガス代が高くなると、少額の送金やトークンの交換でも手数料の負担が大きくなります。この問題に対しては、取引するタイミングの調整やレイヤー2の利用など、利用者側でコストを抑える方法があります。
取引需要の集中によってガス代が上昇する
イーサリアムでは、1つのブロックで処理できる取引量に上限があるため、利用者が集中すると取引を処理するための計算資源が不足しやすくなります。
ガス代の基本手数料は、ブロックの使用状況に応じて自動的に調整されます。取引需要が多い状態が続くと基本手数料が上昇し、利用者が支払う費用も高くなります。また、取引を早く処理してもらうために優先手数料を高く設定する利用者が増えると、さらに負担が大きくなる場合があります。
例えば、通常のETH送金に必要な21,000ガスを使用する場合、ガス価格が10Gweiなら手数料は0.00021ETHですが、100Gweiまで上昇すると0.0021ETHになります。同じ送金処理でも、ネットワークの状況によって手数料が10倍になる計算です。
さらに、DeFiでのトークン交換やNFTの発行など、通常のETH送金より多くのガスを消費する操作では、ガス価格の上昇による影響が大きくなります。取引する資産の金額が小さくても、必要なガス代が必ずしも小さくなるわけではないため、少額取引では手数料が割高になることがあります。
取引するタイミングや手数料設定を調整する
ガス代を抑える方法の1つは、ネットワークの混雑が落ち着いているタイミングで取引することです。取引需要が減少すると基本手数料も低下するため、急いで送金する必要がない場合は、ガス価格を確認してから実行することで費用を抑えられる可能性があります。
現在のガス価格は、Etherscanなどのブロックチェーンエクスプローラーで確認できます。こうしたサービスでは、ネットワークの混雑状況や手数料の目安が公開されているため、取引するタイミングを判断する際に役立ちます。
また、対応するウォレットでは、ガス1単位あたりの最大手数料や優先手数料を調整できます。急ぎの取引でなければ、優先手数料を低めに設定することで、支払う費用を抑えられる場合があります。
ただし、優先手数料を低くすると、取引がブロックに取り込まれるまでの時間が長くなることがあります。また、最大手数料を現在の基本手数料より低く設定した場合、その条件では取引を実行できません。手数料の設定を変更する際は、取引が遅延する可能性も考慮する必要があります。
レイヤー2の利用とネットワーク側の改善
メインネットのガス代が高い場合、利用したいサービスがレイヤー2に対応していれば、そちらで取引することも対策になります。ただし、実際に費用を抑えられるかどうかは、資産の移動を含めて判断する必要があります。
例えば、ETHをメインネットからレイヤー2に移す場合、ブリッジの利用に手数料がかかることがあります。少額の取引を1回だけ行う目的で資産を移動すると、移動費用が手数料の節約分を上回る可能性があります。
そのため、利用する暗号資産取引所が目的のレイヤー2への直接出庫に対応しているか、送金先のサービスがそのネットワーク上で利用できるかを確認すると、不要な移動費用を避けやすくなります。また、同じ名前のトークンでもネットワークによって扱いが異なるため、送付先の対応状況を確認する必要があります。
ネットワーク側でも、ブロックガスリミットの引き上げや取引処理の効率化、レイヤー2向けのデータ処理能力の拡張が進められています。ただし、メインネットの処理能力には限りがあるため、取引需要が集中するとガス代が上昇する可能性は残ります。取引前に、利用先のネットワークと必要な費用を確認することが重要です。
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スマートコントラクトの不具合や脆弱性によって資産を失う可能性がある
イーサリアム上のDeFiなどのサービスでは、スマートコントラクトのプログラムに不具合や脆弱性があると、預け入れた暗号資産が不正に移転されたり、引き出せなくなったりする可能性があります。
スマートコントラクトは、あらかじめ設定されたルールに従って処理を実行するため、プログラム自体に問題があっても自動的に修正されるわけではありません。このリスクを減らすために、開発者によるテストや第三者のコード監査などが実施されていますが、すべての問題を事前に発見できるとは限りません。
プログラムの欠陥によって資産流出や引き出し不能が発生する
スマートコントラクトの脆弱性には、資産の移転処理の不備や、特定の操作を実行できる権限の設定ミスなどがあります。
例えば、「リエントランシー(再入可能性)」と呼ばれる脆弱性では、資産を引き出す処理が完了する前に、外部のスマートコントラクトから同じ処理を繰り返し呼び出されることがあります。適切な対策が取られていない場合、攻撃者が本来引き出せる数量を超えて資産を取得する可能性があります。
また、スマートコントラクトの管理権限が適切に設定されていない場合、本来は管理者だけが実行できる資産移動や設定変更などを、第三者に悪用されるおそれがあります。
資産が流出するだけでなく、プログラムの欠陥によって引き出し処理が正常に実行できなくなる場合もあります。スマートコントラクトに預け入れた資産は、指定された条件に従って管理されるため、引き出し機能に問題があると、利用者が自分の資産を動かせなくなる可能性があります。
こうした問題は、イーサリアムのネットワーク自体に不具合がなくても、個別のDeFiサービスなどで発生します。また、ブロックチェーン上で確定した不正な資産移転は、通常の取引と同様に簡単には取り消せません。
コード監査や脆弱性対策による安全性の向上
スマートコントラクトの安全性を高めるため、開発者は公開前にプログラムの動作確認や脆弱性の検査を行います。通常の操作だけでなく、想定外の入力や不正な操作を試すことで、資産の移転や管理に問題がないかを確認します。
また、外部の専門家がプログラムを調査するコード監査(セキュリティ監査)も重要な対策です。開発チーム以外の第三者がソースコードを確認し、脆弱性や設計上の問題を指摘することで、サービス公開前に欠陥を修正できる可能性が高まります。
公開後の対策としては、脆弱性を発見した人に報奨金を支払う「バグバウンティ」や、不審な取引を監視する仕組みなどがあります。重大な問題が発生した際に、特定の機能を一時停止できる仕組みを設けているサービスもあります。
さらに、一部のスマートコントラクトでは、公開後にプログラムの実装を変更できるアップグレード機能が採用されています。ただし、アップグレードによって新たな脆弱性が発生する可能性や、変更権限を持つ管理者に依存する問題もあるため、変更権限の管理が重要になります。
これらの対策はリスクを軽減するためのものですが、コード監査を受けたサービスでも、未発見の脆弱性が残っている可能性があります。監査済みであることだけを理由に、安全性が保証されていると判断することはできません。
利用前に監査状況や資産の管理権限を確認する
DeFiなどのサービスを利用する際は、公式サイトでコード監査の実施状況や、スマートコントラクトの管理方法を確認することが重要です。
監査報告書が公開されている場合は、監査の対象となったプログラムの範囲や実施時期、発見された問題への対応状況を確認できます。監査後にプログラムが変更されている場合は、その変更部分まで監査されているかにも注意が必要です。
また、サービスの管理者がスマートコントラクトを変更できるのか、預け入れた資産を移動する権限を持つのか、緊急停止機能があるのかなども確認したい項目です。特に多額の資産を預ける場合は、管理権限の範囲を把握しておくことが重要です。
利用者自身ができる対策としては、最初から多額の資産を預けず、少額で入出金などの操作を確認する方法があります。ただし、少額で正常に利用できたとしても、将来的に脆弱性が悪用されないことを保証するものではありません。
さらに、DeFiサービスを利用する際には、ウォレット内のトークンをスマートコントラクトが移動できるようにする「承認(Approve)」を求められることがあります。必要以上に大きな数量の移動を許可すると、承認先のスマートコントラクトが悪用された場合に、被害が拡大する可能性があります。
そのため、承認する数量を必要な範囲に制限し、利用しなくなったサービスへの承認は取り消すことが有効です。Etherscanなどのツールを利用すれば、ウォレットが許可しているトークンの移動権限を確認し、不要な承認を取り消すことができます。
このように、スマートコントラクトのリスクを完全になくすことは難しいものの、監査状況や管理権限の確認、承認範囲の制限などによって、利用者自身も被害の可能性を減らすことができます。
レイヤー2によって安全性や利用条件が異なる
イーサリアムのレイヤー2は、メインネットより低い手数料で取引できる一方、ネットワークごとに安全性や利用条件が異なります。取引を管理する主体や検証方法、資産の引き出し条件などが統一されているわけではありません。
特に、運営者に権限が集中しているレイヤー2では、システムの停止や不正な仕様変更などが利用者の資産に影響する可能性があります。また、ネットワーク間で資産を移動する際には、ブリッジの安全性や手数料、引き出しに必要な時間なども確認する必要があります。
取引の管理体制や検証の仕組みによって安全性が異なる
レイヤー2では、利用者の取引を受け付けて順序を決める「シーケンサー」と呼ばれる仕組みが利用されています。シーケンサーは取引をまとめて処理し、必要な情報をイーサリアムのメインネットへ送信する役割を担います。
一部のレイヤー2では、このシーケンサーの運用が特定の事業者に集中しています。そのため、シーケンサーに障害が発生すると取引処理が停止したり、運営者の判断によって一部の取引が処理されなかったりする可能性があります。
また、レイヤー2の中には、運営チームや限られた管理者がシステムの重要な設定やスマートコントラクトを変更できるものもあります。こうした権限が悪用されたり、管理用の秘密鍵が流出したりすると、ネットワークの運用や預け入れた資産に影響するおそれがあります。
これらのリスクを減らすため、一部のレイヤー2では、シーケンサーを経由せずにメインネットから取引を送信する機能や、重要な仕様変更までに一定の待機期間を設ける仕組みが導入されています。
さらに、不正な取引結果を検証・排除する仕組みについても、第三者が自由に検証へ参加できるかなど、ネットワークごとに違いがあります。そのため、イーサリアムを基盤としているという理由だけで、すべてのレイヤー2がメインネットと同じ安全性を備えていると判断することはできません。
メインネットへの資産の引き出しに時間がかかる場合がある
レイヤー2で保有しているETHやトークンをイーサリアムのメインネットへ戻す場合、利用するネットワークや引き出し方法によって、処理が完了するまでの時間が異なります。
特に、オプティミスティック・ロールアップでは、提出された取引結果に問題がないかを確認するための異議申し立て期間が設けられています。そのため、公式のブリッジを利用してメインネットへ資産を引き出す場合、一般的に約7日間の待機が必要になります。
一方、ZKロールアップでは暗号学的な証明によって取引結果を検証するため、同じような異議申し立て期間は必要ありません。ただし、証明の生成やメインネットでの確定処理などに時間がかかるため、必ず即時に引き出せるわけではありません。
また、外部の流動性提供者を利用するブリッジでは、公式ブリッジの確定を待たずに資産を受け取れる場合があります。ただし、追加の手数料が発生したり、利用可能な流動性によって移動できる数量が制限されたりすることがあります。
そのため、すぐに資産を売却・送金する予定がある場合は、利用するレイヤー2から目的のネットワークへ移動する際の所要時間や手数料を事前に確認することが重要です。
ブリッジの不具合や資産の分散によるリスク
イーサリアムのメインネットとレイヤー2、あるいは異なるレイヤー2間で資産を移動するには、一般的に「ブリッジ」と呼ばれる仕組みを利用します。
ブリッジには、ネットワークが提供する公式のものに加え、外部の事業者やプロジェクトが運営するものもあります。資産の移動方法や検証体制はそれぞれ異なり、一部のブリッジでは外部の管理者や検証者を信頼する必要があります。
ブリッジのスマートコントラクトに脆弱性がある場合や、資産を管理する権限が不正に利用された場合には、移動中の資産やブリッジに預け入れられた資産が失われる可能性があります。過去には、ブリッジの脆弱性などを悪用した大規模な資産流出事件も発生しています。
また、レイヤー2ごとに独立したネットワークが存在するため、資産や取引の流動性が分散する問題もあります。
例えば、同じUSDCという名称のトークンでも、ネットワークや発行・移動方法によって異なるスマートコントラクトで管理されている場合があります。名称が同じでも、利用したいサービスがそのトークンに対応しているとは限りません。
分散型取引所などでも、ネットワークごとに取引可能な資産や流動性が異なります。そのため、あるレイヤー2では十分な数量を取引できても、別のレイヤー2では希望する数量を交換できなかったり、取引価格が不利になったりする場合があります。
ネットワーク間で資産を移動する際は、移動先のネットワーク名だけでなく、トークンの種類やコントラクトアドレス、利用予定のサービスへの対応状況も確認する必要があります。
利用前にレイヤー2の安全性や運用状況を確認する
レイヤー2を選ぶ際は、取引手数料や処理速度だけでなく、ネットワークの安全性や管理権限についても確認することが重要です。
例えば、レイヤー2の分析サイト「L2BEAT」では、各ネットワークの取引検証方法、シーケンサーの運用体制、スマートコントラクトの変更権限、資産を引き出すための条件などが公開されています。
また、L2BEATではロールアップの分散化や運用上の権限を評価する「Stage 0」「Stage 1」「Stage 2」という成熟度の区分も用意されています。こうした情報は、運営者への依存度や仕組みの発展状況を比較する際の参考になります。
ただし、Stageの区分はスマートコントラクトの脆弱性などを含む安全性のすべてを評価するものではありません。利用する際は、公式ドキュメントやセキュリティ監査の状況なども合わせて確認することが大切です。
利用者が実際に資産を移動する場合は、公式サイトで対応するブリッジを確認し、移動元・移動先のネットワーク、手数料、引き出し条件を確認してから操作します。初めて利用するネットワークでは、少額の資産で移動や受け取りを試すことも、操作ミスによる被害を減らす方法の1つです。
このように、レイヤー2は低コストで取引できるメリットがある一方、安全性や利用条件はネットワークごとに異なります。利用目的に合ったネットワークを選ぶだけでなく、資産の管理方法や移動時のリスクを把握しておくことが重要です。
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ステーキングされたETHが一部の事業者に集中する可能性がある
イーサリアムでは、ステーキングサービスを通じて多くのETHが一部の事業者に集まると、取引の検証やブロック生成に関する権限が集中する可能性があります。
イーサリアムのPoSでは、ステーキングされたETHの数量がネットワークの合意形成における影響力に関係します。そのため、少数の事業者が大量のETHに対応するバリデータを管理する状態が進むと、取引の検閲耐性やネットワークの分散性が弱まるおそれがあります。
ステーキングサービスへの集中が起こる理由
イーサリアムでは、個人が自分でバリデータを運用することもできますが、機器の準備や継続的な管理には一定の負担がかかります。そのため、暗号資産取引所やステーキングプールなど、外部の事業者に運用を任せる利用者も多く存在します。
こうしたサービスでは、多数の利用者から集めたETHを使って、事業者自身や提携するノード運営者がバリデータを稼働させます。利用者にとっては少額から参加できたり、機器を管理せずに報酬を受け取れたりする一方、特定のサービスに資産が集まりやすくなります。
ただし、ステーキングサービスに預けられたETHが、必ずしも1つの事業者によってすべて運用されるわけではありません。複数の独立したノード運営者にバリデータの運用を分散しているサービスもあります。
そのため、集中度を考える際には、サービスに預けられたETHの総量だけでなく、実際に誰がバリデータを運用し、取引の検証やブロックの提案を管理しているのかを区別する必要があります。
取引の検閲やネットワークの安定性に影響する可能性がある
大量のETHに対応するバリデータを少数の事業者が管理している場合、それらの事業者の判断や運用上の問題が、ネットワーク全体に影響する可能性があります。
例えば、大規模なバリデータ運営者が特定のアドレスからの取引をブロックに含めない方針を採用すると、その運営者がブロックを提案する機会には、対象となる取引が処理されにくくなります。
ほかの独立したバリデータが取引を取り込むことは可能ですが、多くの運営者が同じ方針を採用すれば、特定の取引が継続的に排除されるリスクが高まります。これは、誰でもネットワークを利用できるというイーサリアムの検閲耐性に関わる問題です。
また、大規模な運営者が同じソフトウェアやクラウドサービスを利用している場合、共通の不具合や障害によって多数のバリデータが同時に停止する可能性があります。
特に、ネットワーク全体でステーキングされているETHの3分の1を超える数量に対応するバリデータが同時に投票できなくなると、ブロックの最終確定が一時的に停止する可能性があります。
このように、バリデータの集中は、不正行為だけでなく、運用方針の統一や大規模なシステム障害を通じてもネットワークに影響する可能性があります。
ソロステーキングや分散型バリデータ技術による改善
ステーキングの集中を緩和する方法の1つが、利用者自身がバリデータを運用するソロステーキングの普及です。
ソロステーキングでは、利用者が自分でバリデータの運用環境やソフトウェアを選択できます。独立した運営者が増えることで、特定の事業者やシステムへの依存を減らし、ネットワークの分散性を高めることにつながります。
また、DVT(Distributed Validator Technology/分散型バリデータ技術)と呼ばれる仕組みも活用されています。DVTは、1つのバリデータの署名権限を複数の独立した運営者に分散し、共同で運用できるようにする技術です。
例えば、複数の運営者でバリデータを管理すれば、そのうち1つの運営者に障害が発生しても、残りの運営者によって検証活動を継続できる構成を作れます。また、単独の運営者がバリデータの署名権限を完全に管理する状態を避けられます。
ただし、DVTを導入するだけでステーキングされたETHの集中が解消されるわけではありません。実際に独立した運営者へ管理権限が分散されているかが重要になります。
利用者がステーキングサービスを選ぶ場合も、報酬率だけでなく、バリデータを運用する事業者の数や管理権限の分散状況、使用するソフトウェアの多様性などを確認することが大切です。
イーサリアムでは、ソロステーキングの支援やDVTの導入などを通じて、ネットワークの分散性を維持する取り組みが進められています。
取引順序を利用した不利な取引が発生することがある
イーサリアムでは、ブロックに含まれる取引の順序を利用して利益を得るMEV(Maximal Extractable Value/最大抽出可能価値)と呼ばれる仕組みがあります。
MEVには、取引所間の価格差を解消するなどの働きもありますが、一部の手法は一般の利用者に不利益を与えます。特に、分散型取引所(DEX)では、利用者の取引を前後から挟み込む「サンドイッチ攻撃」によって、本来より不利な価格で暗号資産を交換させられることがあります。
取引の順序を利用して利益を得るMEVの仕組み
イーサリアムでは、利用者が送信した取引がブロックに取り込まれる際、その順序によって取引結果が変わることがあります。MEVは、取引をブロックに含める順序や組み合わせなどを調整することで、通常の取引手数料などとは別に得られる利益を指します。
例えば、2つの分散型取引所で同じ暗号資産の価格が異なる場合、価格が安い取引所で購入し、高い取引所で売却することで差額を得られます。こうした取引は「アービトラージ(裁定取引)」と呼ばれ、取引所間の価格差を縮小する働きもあります。
一方、利用者が送信した取引を先回りして実行し、その取引によって生じる価格変動から利益を得る手法もあります。
MEVによる利益を狙う参加者は「サーチャー」と呼ばれ、取引情報や市場価格を監視して利益を得られる機会を探します。サーチャーは、取引の順序を調整するブロックビルダーなどの仕組みを利用して、自分の取引を有利な位置に組み込もうとします。
そのため、MEVはすべてが不正な行為というわけではありませんが、利益を得る方法によっては、ほかの利用者の取引条件を悪化させる問題につながります。
サンドイッチ攻撃によって不利な価格で取引させられる
サンドイッチ攻撃は、DEXで利用者が暗号資産を交換する際、その取引の直前と直後に攻撃者が売買を行い、価格差から利益を得る手法です。
例えば、利用者がDEXで大量のトークンを購入しようとしている場合、攻撃者はその注文を検知し、利用者より先に同じトークンを購入します。
これによってトークンの価格が上昇すると、利用者は当初の想定より高い価格で購入することになります。その後、攻撃者は保有しているトークンを売却し、価格差から利益を得ようとします。
このように、攻撃者の買い注文と売り注文で利用者の取引を挟むことから、サンドイッチ攻撃と呼ばれています。
特に注意したいのが、DEXで設定するスリッページ許容率です。スリッページとは、取引時に提示された価格と、実際に取引が成立する価格の差を指します。
スリッページ許容率を大きく設定すると、多少不利な価格になっても取引が成立するため、攻撃者が価格を操作して利益を得られる余地が広がります。
例えば、100トークンを受け取る想定で交換する際に、スリッページ許容率を5%に設定していると、条件によっては95トークンの受け取りでも取引が成立します。攻撃者は、この許容範囲を利用して利益を得ようとすることがあります。
スリッページ設定や保護機能でリスクを減らす
サンドイッチ攻撃による被害を減らすには、DEXでの取引時にスリッページ許容率を必要以上に大きく設定しないことが重要です。
スリッページ許容率を小さく設定すると、実際の交換価格が許容範囲を超えて不利になった場合に取引が成立しなくなるため、大きな価格差での約定を防ぎやすくなります。
ただし、許容率を小さくしすぎると、通常の価格変動でも取引が失敗する可能性があります。また、失敗した取引でもガス代が発生する場合があるため、取引するトークンの流動性や市場の変動状況に応じた設定が必要です。
また、取引情報を一般公開される取引待機領域(パブリックメンプール)に送信せず、限定された経路でブロックビルダーなどに届ける「プライベートトランザクション」も対策の1つです。
一部のウォレットやDEXには、こうした非公開の取引経路や、サンドイッチ攻撃を受けにくくする保護機能が用意されています。例えば、Uniswapの一部の取引機能では、取引情報の公開方法や注文の処理方法を工夫することで、MEVによる不利益を減らす取り組みが行われています。
ただし、保護機能を利用しても、すべてのMEVを防げるわけではありません。利用するサービスによって保護範囲や取引の処理方法が異なるため、対応するネットワークや適用条件を確認する必要があります。
ネットワーク側でもMEVによる悪影響を減らす取り組みが進む
MEVへの対策では、個々の利用者が取引情報を保護するだけでなく、取引がブロックに取り込まれる過程で生じる問題を減らすことも重要です。
現在は、MEV-Boostなどを通じて、ブロック提案者とブロック構築者の役割を分離する運用が行われています。この方式では外部のブロックビルダーや中継サービスが重要な役割を持つため、それらの事業者への依存や取引の選別が課題になります。
こうした外部の仕組みへの依存を減らすため、役割分担をプロトコルに組み込む「ePBS」の開発が進められています。ただし、ePBSだけでサンドイッチ攻撃を防げるわけではなく、ブロック構築に関する公平性や安全性を改善する取り組みとして位置づけられます。
また、取引がブロックに取り込まれる前に内容を第三者へ知られにくくする「暗号化メンプール」なども研究されています。取引を先回りして利用する行為を減らすには、こうした情報保護の仕組みや、DEX側の注文処理の改善も重要です。
イーサリアムに関するよくある質問
イーサリアムについては、「誰がネットワークを管理しているのか」「ETHは少額でも購入できるのか」「ステーキングには32ETHが必要なのか」といった疑問を持つ方もいるでしょう。
ここでは、イーサリアムの管理体制やETHの購入・ステーキングに関するよくある質問を取り上げ、それぞれの答えと知っておきたいポイントを解説します。
イーサリアムに関するよくある質問
- イーサリアムは誰が管理している?
- イーサリアムは1ETH未満でも購入できる?
- ETHのステーキングには32ETHが必要?

イーサリアムについて疑問に思うところがあれば、クリックして見てみましょう↓
イーサリアムは誰が管理している?
イーサリアムは、特定の企業や個人が単独で管理しているネットワークではありません。世界各地の開発者、ノード運営者、バリデータ、利用者などが、それぞれの役割を担いながらネットワークを維持しています。
イーサリアムの開発を支援する組織として「Ethereum Foundation(イーサリアム財団)」がありますが、財団がネットワーク全体を所有・管理しているわけではありません。ネットワークの仕様変更も、財団や創設者のヴィタリック・ブテリンが単独で決定できる仕組みにはなっていません。
開発者・ノード運営者・バリデータがそれぞれの役割を担う
イーサリアムの運用には、さまざまな立場の参加者が関わっています。それぞれの役割は異なり、1つの組織がすべてを担当しているわけではありません。
開発者は、ネットワークを動かすソフトウェアの開発や、技術的な問題の改善、新しい機能の提案などを行います。イーサリアムには複数の独立した開発チームが存在し、共通の仕様に従って異なるソフトウェアを開発しています。
ノード運営者は、イーサリアムのネットワークに接続するコンピューターを運用し、取引やブロックがルールに従っているかを検証します。不正な取引やブロックを受け入れず、正しい取引情報をネットワーク内で共有する役割を担っています。
バリデータは、ETHをステーキングしてブロックの提案や検証に参加します。ノードの機能を利用しながら、ネットワークの合意形成に直接関わる参加者です。
また、ETHの保有者やDeFiなどのサービスを利用する人々も、イーサリアムのエコシステムを構成する参加者です。利用者は、ネットワークの変更に関する議論に参加したり、自分が利用するサービスやネットワークを選択したりできます。
Ethereum Foundationは、こうした参加者の活動を支援する組織の1つです。研究開発への資金提供や開発者の支援などを行っていますが、ネットワークの取引を一元的に承認したり、すべての参加者に仕様変更を強制したりする権限は持っていません。
ネットワークの仕様変更は公開された議論と合意形成によって決まる
イーサリアムでは、ネットワークの仕様を変更する際に、EIP(Ethereum Improvement Proposal/イーサリアム改善提案)と呼ばれる仕組みが利用されています。
EIPは、新しい機能や技術的な変更を提案するための文書です。開発者に限らず、コミュニティの参加者も提案でき、変更の目的や具体的な仕様などを公開して議論を進めます。
ネットワーク全体に影響する変更については、開発者や研究者などが技術的な問題や安全性を検討し、複数のクライアント開発チームが実装やテストを行います。
ただし、開発者の間で変更方針がまとまっても、それだけでネットワーク全体のルールが自動的に変更されるわけではありません。実際に変更を反映するには、ノード運営者やバリデータなどが対応するソフトウェアを導入し、新しいルールを採用する必要があります。
また、イーサリアムでは、ETHの保有数量に応じた単純な多数決でネットワークの仕様を決定しているわけではありません。開発者やノード運営者、利用者など、さまざまな参加者による公開された議論と合意形成を通じて変更が進められます。
大きな意見の対立が発生し、異なるルールを採用する参加者がそれぞれネットワークの運用を続けた場合には、ブロックチェーンが分岐することもあります。
このように、イーサリアムでは特定の管理者がすべてを決定するのではなく、複数の参加者が独立してネットワークを運用し、合意形成を通じて改良を進める仕組みが採用されています。
イーサリアムは1ETH未満でも購入できる?
イーサリアム(ETH)は、1ETH未満の少額から購入できます。例えば、0.1ETHや0.01ETH、0.001ETHなど、1ETHを細かく分けた数量でも売買できるため、1ETH分の資金をまとめて用意する必要はありません。
ETHは小数点以下18桁まで分割でき、最小単位は「Wei(ウェイ)」と呼ばれます。1ETHは1,000,000,000,000,000,000Weiに相当し、ブロックチェーン上では、この単位を使って数量を管理しています。
ただし、実際に購入できる最小数量は暗号資産取引所によって異なります。同じ取引所でも、販売所と取引所では最低購入数量や最低注文金額が異なる場合があります。
また、ETHの価格は常に変動しているため、同じ数量でも購入に必要な日本円の金額は変わります。少額から購入したい場合は、利用する取引所の最低購入数量や最低注文金額を確認するとよいでしょう。
ETHのステーキングには32ETHが必要?
ETHのステーキングには、必ずしも32ETHが必要なわけではありません。自分でバリデータを直接有効化する場合は最低32ETHが必要ですが、ステーキングプールや暗号資産取引所のサービスを利用すれば、32ETH未満でも参加できます。
ただし、必要なETHの数量だけでなく、報酬の受け取り方や資産の管理方法、引き出し条件なども参加方法によって異なります。
32ETHが必要なのはバリデータを直接有効化する場合
32ETHという基準は、イーサリアムのネットワークで1つのバリデータを直接有効化する際の最低数量を指します。自分で運用する場合だけでなく、32ETHを用意して専門事業者に運用を委託する場合にも、この基準が適用されます。
2025年のPectraアップグレード以降、対応するバリデータでは最大2,048ETHを有効残高として扱えるようになりました。ただし、バリデータを有効化する際の最低数量は引き続き32ETHです。
一方、ステーキングプールでは、複数の参加者が預けたETHをまとめて運用できます。この場合、1つのバリデータに必要な32ETHを利用者1人がすべて負担する必要はありません。また、一部の仕組みでは、ノード運営者が必要数量の一部を拠出し、残りをプールから補う方式も採用されています。
少額で参加する場合はサービスごとの条件を確認する
32ETH未満で参加したい場合は、ステーキングプールや暗号資産取引所のサービスが選択肢になります。ただし、ネットワークが定める32ETHという基準と、各サービスが定める最低申込数量は別のものです。
最低申込数量はサービスごとに異なり、ETHの数量や日本円に換算した金額などで条件が設定される場合があります。少額で始める際には、利用するサービスの最新の条件を確認する必要があります。
また、利用開始前には、ETHを誰が管理するのか、報酬からどのような手数料が差し引かれるのか、引き出しを申請してから資産を受け取るまでにどの程度の期間が必要なのかを確認することが重要です。
取引所などに預ける方式では事業者の管理体制、スマートコントラクトを利用する方式ではプログラムの不具合がそれぞれリスクになります。リキッドステーキングで受け取るトークンについては、ETHとの交換価値が市場で変動する可能性もあります。参加方法による違いを理解したうえで、必要数量だけでなく管理方法や引き出し条件も比較することが大切です。
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イーサリアムの現在の状況と今後の展望
イーサリアムは現在、スマートコントラクトを活用したDeFiやNFTなど、多様なサービスを支えるブロックチェーン基盤として利用されています。メインネットに加えて、ArbitrumやBaseなどのレイヤー2でもアプリケーションの開発・利用が広がっており、ネットワーク全体の処理能力を高めるためのアップグレードも継続されています。
今後は、メインネットの処理能力の向上やレイヤー2の効率化によって、より多くの取引を低コストで処理できる環境の整備が進められる見通しです。また、利用者の操作性を改善するとともに、ネットワークの安全性や分散性を維持・強化することも重要な開発テーマとなっています。

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イーサリアムの現在の状況
2026年10月現在、イーサリアムはDeFi(分散型金融)やステーブルコイン、NFTなど、幅広いサービスを支えるブロックチェーン基盤として利用されています。メインネットだけでなく、BaseやArbitrumなどのレイヤー2でも取引やアプリケーションの利用が広がっています。
また、Proof of Stake(PoS)によるネットワークの運用が続いており、多くのETHがステーキングされています。技術面では、これまでのアップグレードで拡張された処理能力を活用しながら、次の大規模アップグレードに向けたテストや開発が進められています。
DeFiやステーブルコインを中心に幅広く利用されている
イーサリアムのメインネットでは、暗号資産の交換や貸し借り、資産管理などを行うDeFiサービスが継続して利用されています。代表的なサービスには、分散型取引所のUniswapや、暗号資産の貸し借りを行うAaveなどがあります。
DeFiの利用規模を示す指標の1つが、サービス内に預け入れられている暗号資産などの評価額を合計したTVL(Total Value Locked/預かり資産総額)です。DeFiLlamaの集計では、2026年10月時点でイーサリアム上のDeFiのTVLは約500億ドル規模となっています。
また、米ドルなどの法定通貨に価値を連動させたステーブルコインの利用も広がっています。イーサリアム上ではUSDTやUSDCなどが発行・流通しており、DeFiでの取引や資産の移転などに利用されています。
さらに、現実の金融資産をブロックチェーン上で扱うRWA(現実資産のトークン化)の分野でも、イーサリアムが利用されています。米国債に関連する金融商品などをトークンとして発行・管理する取り組みが進んでおり、従来の金融市場とブロックチェーンを結びつける用途も広がっています。
このように、イーサリアムは暗号資産の送金や売買だけでなく、金融サービスやデジタル資産を扱うための基盤として利用されています。
レイヤー2を含むネットワーク全体で利用が広がっている
イーサリアムでは、メインネットに加えて、レイヤー2を活用したサービスの開発・運用が進んでいます。代表的なネットワークには、Base、Arbitrum、OP Mainnetなどがあり、それぞれで暗号資産の送金やDeFiなどの取引が行われています。
レイヤー2の利用状況を調査するL2BEATでは、これらのネットワークで多額の暗号資産が管理され、継続的に取引が処理されていることを確認できます。特にBaseやArbitrumは、レイヤー2の中でも大きな資産規模を持つネットワークとなっています。
また、2025年12月のFusakaアップグレードで導入されたPeerDASなどの技術によって、レイヤー2が利用するデータ処理能力の拡張も進みました。現在は、こうした技術を活用しながら、より多くの取引を低コストで処理する環境が整備されています。
一方、レイヤー2ごとに対応するアプリケーションや資産が異なるため、ネットワーク間での資産移動やサービスの連携を改善する取り組みも進められています。
このように、イーサリアムの利用はメインネットだけで完結するものではなく、複数のレイヤー2を含めたエコシステム全体へと広がっています。
多くのETHがステーキングされネットワークを維持している
イーサリアムでは、PoSによるネットワークの運用が続いており、多くのバリデータがブロックの提案や検証に参加しています。
ブロックチェーンエクスプローラーのbeaconcha.inによると、2026年10月時点で約4,300万ETH以上がステーキングされており、数十万規模のバリデータがネットワークの運用を支えています。
ステーキングには、個人が自分でバリデータを運用する方法に加え、LidoやRocket Poolなどのステーキングプール、暗号資産取引所が提供するサービスを利用する方法があります。
また、複数の運営者でバリデータを管理する分散型バリデータ技術(DVT)など、ステーキングの運用体制を多様化する取り組みも行われています。
現在のイーサリアムは、個人のノード運営者から大規模なステーキング事業者まで、さまざまな参加者によって維持されています。今後もネットワークの安全性を確保するうえで、運用主体の分散性が重要な要素となっています。
メインネットの改善と次期アップグレードの検証が進む
イーサリアムでは、既存のネットワークを運用しながら、処理能力や操作性、安全性を改善するための開発が続けられています。
2025年に実施されたPectraやFusakaなどのアップグレードにより、アカウント機能やバリデータの運用効率、レイヤー2向けのデータ処理能力などが改善されました。また、メインネットのブロックガスリミットも引き上げられ、1つのブロックで処理できる取引量が拡大しています。
2026年10月現在は、次期アップグレード「Glamsterdam(グラムステルダム)」に向けた検証が進められています。同年10月6日にはテストネットのSepoliaに導入され、実際のネットワーク環境に近い条件で、新しいブロック生成・検証方式などの動作確認が行われています。
Glamsterdamは、現時点ではイーサリアムのメインネットには導入されていません。開発チームはテストネットでの検証結果を確認しながら、メインネットへの導入に向けた準備を進めています。
こうしたアップグレードの開発には、Ethereum Foundationだけでなく、複数のクライアント開発チームや研究者、コミュニティの参加者などが関わっています。
イーサリアムは現在も、既存のサービスを支えるネットワークとして運用されると同時に、利用の拡大に対応するための技術改良が継続されている状況です。
イーサリアムの今後の展望
イーサリアムでは、ネットワークの処理能力を高めながら、安全性や分散性を維持するための開発が進められています。Ethereum Foundationが2026年に公表した開発方針では、処理能力の拡張、利用者の操作性向上、メインネットの安全性強化などが重点分野として示されています。
今後は、次期アップグレード「Glamsterdam」によるメインネットの性能向上に加え、レイヤー2の効率化やネットワーク間の連携改善が期待されています。また、ウォレットの使いやすさや検閲耐性、将来的な量子コンピューターへの対策なども重要な開発テーマとなっています。
Glamsterdamによるメインネットの処理能力向上
イーサリアムでは、メインネットで処理できる取引量を増やすため、ブロックの作成・検証方法やデータの処理効率を改善する開発が進められています。
2026年第4四半期のメインネット導入を目指す「Glamsterdam」では、主な変更としてePBS(Enshrined Proposer-Builder Separation)と、ブロックレベルのアクセスリスト(BAL)が予定されています。
ePBSは、ブロックを提案する役割と、取引をまとめてブロックを構築する役割を、ネットワークの基本的な仕組みの中で分離する技術です。これにより、ブロックのデータをネットワーク全体に伝える時間を確保しやすくなり、より多くの取引データを安全に処理するための基盤が整うと期待されています。
一方、ブロックレベルのアクセスリストは、取引によって読み書きされるデータを事前に把握できるようにする仕組みです。互いに影響しない処理を並列化しやすくすることで、取引の検証やノードのデータ処理を効率化することが目指されています。
これらの改善が実装されれば、ブロックガスリミットをさらに引き上げ、メインネットで処理できる取引量を増やしやすくなります。取引需要に対して十分な処理能力を確保できれば、ネットワークの混雑やガス代の負担を軽減する効果も期待できます。
ただし、2026年10月15日時点でGlamsterdamはメインネットへの導入前であり、予定されている変更が実際の運用環境でどの程度の性能向上につながるかは、導入後の検証が必要です。また、ブロックの処理量を増やす際には、ノードの計算能力やデータ保存容量への負担も考慮する必要があります。
レイヤー2の低コスト化とネットワーク間の連携
イーサリアムでは、メインネットの性能向上と並行して、レイヤー2でより多くの取引を低コストで処理できる環境の整備が進められています。
特に重要なのが、レイヤー2がメインネットに記録するデータの処理能力を拡張することです。2025年に導入されたPeerDASを基盤として、今後もBlobと呼ばれるデータ領域を効率よく扱い、レイヤー2が利用できるデータ容量を増やす開発が進められています。
レイヤー2が利用できるデータ容量が増えれば、より多くの取引データをまとめて記録できるようになります。その結果、メインネットへの記録費用を多くの取引で分担でき、送金やDeFiなどの操作にかかる手数料を抑えやすくなると期待されています。
また、今後は異なるレイヤー2同士の連携も重要になります。現在は、ネットワークごとに資産やアプリケーションが分かれており、別のレイヤー2に資産を移動する際には、ブリッジなどを利用する必要があります。
こうした問題に対し、利用者が移動先のネットワークや複雑な資産移動の手順を意識せずに操作できるようにする、相互運用性の改善が進められています。例えば、利用者が実行したい操作を指定し、必要なネットワーク間の処理をサービス側で調整する「インテント」と呼ばれる方式などが開発されています。
データ処理能力の拡張とネットワーク間の連携が進めば、イーサリアムを基盤とした複数のレイヤー2を、より一体的に利用できる環境が整うと期待されています。
一方、レイヤー2の手数料はデータ容量だけで決まるわけではなく、各ネットワークの利用状況や運営方法にも左右されます。また、ネットワーク間の連携では、資産移動の安全性や異なるサービス間での互換性を確保することが、引き続き重要な課題となります。
アカウント抽象化によるウォレットの操作性向上
イーサリアムでは、暗号資産に詳しくない利用者でもサービスを使いやすくするため、ウォレットや取引操作の改善が進められています。
その中心となる技術が、アカウント抽象化(Account Abstraction)です。従来のウォレットでは、秘密鍵による取引の署名やETHを使った手数料の支払いなどが基本となっていましたが、アカウント抽象化によって、より柔軟な操作方法を導入しやすくなります。
例えば、複数の操作を1回の取引にまとめたり、サービスの提供者が利用者に代わって手数料を負担したりする仕組みが考えられます。また、複数の認証方法を組み合わせることで、秘密鍵の紛失に備えたアカウントの復旧機能なども実装できます。
2025年のPectraでは、既存のアカウントがスマートコントラクトの機能を利用できるEIP-7702が導入されました。今後はさらに、スマートコントラクト型のアカウントをネットワークの基本機能として扱いやすくする開発が進められています。
具体的には、EIP-8141の「Frame Transactions」など、取引の認証方法や手数料の支払い方法を柔軟にする提案が検討されています。
こうした技術が広く利用されれば、利用者が毎回ガス代を準備したり、複数の取引を個別に承認したりする手間を減らせる可能性があります。ウォレットの操作が簡単になることで、DeFiやゲームなどのサービスを利用する際の負担も小さくなると期待されています。
ただし、実際の操作性はウォレットやアプリケーション側の対応にも左右されます。また、アカウントの復旧や取引の代行などの機能では、利用者の資産を守るための権限管理や安全性の確保が必要になります。
ネットワークの検閲耐性と分散性の強化
イーサリアムでは、処理能力を拡張しながら、特定の事業者や運営者に依存しないネットワークを維持することも重要な開発目標となっています。
特に注目されているのが、ブロックの構築を担当する事業者に権限が集中する問題への対応です。ブロックビルダーなどが少数の事業者に集中すると、特定の取引を意図的に取り込まないといった検閲が行われる可能性があります。
この問題に対して、FOCIL(Fork-choice Enforced Inclusion Lists)と呼ばれる技術の導入が検討されています。
FOCILは、複数のバリデータがブロックに含めるべき取引の一覧を提示し、その条件を満たさないブロックを受け入れないようにする仕組みです。特定のブロックビルダーが取引を排除しようとしても、ほかのバリデータが取引の取り込みを求められるため、検閲への耐性を高めることが期待されています。
また、イーサリアムでは、ノードの運用に必要な計算能力やデータ保存容量を抑えるための研究も進められています。
ネットワークの利用拡大に伴って保存するデータが増え続けると、ノードの運用に高性能な機器が必要になり、参加できる人が限られてしまう可能性があります。そのため、データ管理方式の改善や、すべての状態データを保持しなくてもブロックを検証できる「ステートレス化」などが研究されています。
これらの取り組みが進めば、一般的な機器でもネットワークの検証に参加しやすい環境を維持しながら、処理能力を拡張できる可能性があります。
ただし、FOCILやステートレス化は開発・検証が進められている段階の技術を含みます。ネットワークの安全性や既存システムとの互換性を確認しながら、段階的に導入していく必要があります。
量子コンピューターへの対策と長期的な安全性の確保
イーサリアムでは、将来的な技術の変化に備えるため、量子コンピューターへの対策や取引の検証方法の改良も研究されています。
現在のイーサリアムでは、暗号技術を使って取引の署名や検証を行っています。しかし、将来、高性能な量子コンピューターが実用化された場合、現在使用されている一部の暗号方式が破られる可能性があります。
そこで、量子コンピューターによる攻撃にも耐えられる耐量子暗号(ポスト量子暗号)への移行が、長期的な開発目標として掲げられています。
Ethereum Foundationは2026年9月、2029年12月までにメインネットの実行・合意形成・データ処理の各領域で耐量子対応を実現する目標を公表しました。今後は、新しい署名方式の導入やバリデータの認証方法の変更など、複数の技術的な対応が必要になります。
また、ゼロ知識証明を活用した「zkEVM」によって、ブロック内の取引をすべて実行し直さなくても、計算結果が正しいことを検証できる仕組みの研究も進められています。
こうした技術が実用化されれば、ネットワークの検証に必要な計算負担を減らしながら、安全性を維持するための新しい選択肢が生まれます。
ただし、耐量子暗号やzkEVMの本格的な導入には、計算性能や既存の暗号技術との互換性、ネットワーク全体での安全性の検証など、多くの技術的な課題があります。公表されているロードマップは開発目標であり、すべての機能が予定どおり実装されると確定しているわけではありません。
イーサリアムは今後も、短期的な処理能力の改善だけでなく、長期間にわたって安全に利用できるブロックチェーンを維持するための技術開発を進めていく方針です。
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