MOB（モバイルコイン）とは？
モバイルコインとは？
モバイルコイン（MobileCoin／MOB）は、スマートフォンでの少額送金や日常決済に特化した
プライバシー特化型の暗号資産送金内容を非公開にする設計です。Signalなどのメッセンジャーアプリ内から、友人や家族に「メッセージを送る感覚」でデジタルキャッシュを送れるように設計されています。モバイル端末でも扱いやすいよう、高速な送金と低い手数料、環境負荷の小さい設計が特徴です。
プロジェクトは2017年にJosh Goldbard（ジョシュ・ゴールドバード）とShane Glynnらによって立ち上げられ、独自のMobileCoinブロックチェーン上で2020年末にメインネットが稼働しました。その後、決済アプリ「Moby」を経て、現在はグローバル決済アプリ「Sentz（センツ）」としてブランドを統合しつつも、基盤となる暗号資産MOBは、引き続きプライバシー重視の決済手段として開発・運用が続けられています。
モバイルコインは、開発企業であるMobileCoin Inc.と、ネットワークやエコシステムを支えるMobileCoin Foundationによって運営されています。創業段階からBinance LabsやAlameda Researchといった暗号資産業界の投資家が出資しており、オープンソースのコードはGitHub上で公開されています。
コンセンサスには、Stellar系の仕組みをベースにしたFederated Byzantine Agreement（FBA）型のアルゴリズムが採用されており、限られた検証ノードの間で合意を取ることで、高速なトランザクション処理と省エネ性を両立しています。 一方で、「ノード運営主体が限定されていることによる中央集権性」や、「Signalへの統合」「FTXとの関係」などを巡る議論・批判もあり、規制動向や世論の影響を受けやすいプロジェクトである点には注意が必要です。
まとめると、技術面では高いプライバシー性と決済性能を備えつつも、運営体制や規制面のリスクを理解したうえで利用・投資を検討すべきプロジェクトだと言えます。
以下に、モバイルコイン（MOB）の基本情報を一覧表でまとめました。
| 名前 | モバイルコイン（MobileCoin） |
|---|---|
| 単位 | MOB |
| 最高発行枚数 | 250,000,000枚（MOB） |
| 使用開始日 | 2020年12月6日（メインネット稼働） |
| 作成者 | Josh Goldbard／Shane Glynn らによる MobileCoin Inc. |
| コンセンサスアルゴリズム | Federated Byzantine Agreement（FBA）少数ノードで合意形成する方式（Stellar系の合意アルゴリズム） |
| 主な用途 | モバイル端末からの個人間送金、少額決済、メッセンジャーアプリ内決済などのプライバシー重視のデジタルキャッシュ用途 |
| スマートコントラクト対応 | いいえ（汎用的なスマートコントラクト実行環境は現時点で提供されていません） |
| チェーンの名称 | MobileCoinブロックチェーン（MobileCoin Network／独自チェーン） |
| 公式サイト |
https://www.mobilecoin.foundation https://www.sentz.com |
モバイルコインの特徴
モバイルコインは、「スマホで簡単に使えること」と「送金内容を第三者から守ること」を両立させるために、技術・設計の両面で工夫がされています。ここでは、他の暗号資産と比較したときの代表的な特徴を整理します。
- CryptoNoteやリング署名などを応用した高いプライバシー性とファンジビリティ（代替可能性）
- Stellar系の合意アルゴリズムを用いた高速・低手数料のトランザクション処理
- SignalやSentzアプリとの連携を前提としたモバイルファーストなユーザー体験
- 環境負荷の小さい設計と、カーボンネガティブを掲げる取り組み
プライバシー面では、送信者・受信者・金額が第三者から見えにくくなるよう、 リング署名複数人の中の誰かが署名した形に見せる方式や、 ゼロ知識証明内容を明かさず正しさを証明 といった暗号技術が組み合わされています。これにより、「あるアドレスがどれくらいの残高を持っているか」「誰にいくら送ったか」をブロックチェーン上から直接追跡しにくくなっています。
また、モバイル利用を前提にした設計も重要です。Signalアプリ内の支払い機能や、Sentzアプリ経由での支払いでは、電話番号や連絡先ベースで相手を選んで送金できるようになっており、「ウォレットアドレスをコピー＆ペーストする」のではなく、日常のアプリ操作に近い感覚で扱えるよう工夫されています。
他通貨との比較
この通貨の特徴をより深く理解するために、異なる通貨である モバイルコイン（MOB）、ステラルーメン（XLM）、ベーシックアテンショントークン（BAT） と比較してみましょう。それぞれの将来性や価格変動の傾向、初心者への適性を5段階で評価しています。興味のある通貨があれば、各リンクから詳しい辞書ページもあわせてご覧ください。
※この比較表は、2025年時点での情報や市場状況をもとに、初心者の方にもわかりやすく評価したものです。実際の投資判断は、ご自身の目的やリスク許容度に応じて行ってください。
モバイルコインの利用シーン
モバイルコインは、ビットコインのような「価値の保存」よりも、「日常の支払い」や「越境送金」に強みがあります。特に、スマートフォンとメッセンジャーアプリを使った送金や、法定通貨に連動した資産（eUSDなど）を組み合わせることで、ボラティリティを抑えながら国境をまたいだ決済を行える点が特徴です。
個人での利用シーン
一般ユーザーにとっては、「家族や友人への送金」「海外への仕送り」「オンラインでの少額決済」など、日常生活に近い場面での利用が想定されています。特に、銀行振込や国際送金に比べて、手数料や時間を抑えやすい点が魅力です。
海外への仕送りや留学生へのサポート
銀行の国際送金は、手数料が高く着金まで数日かかることも少なくありません。モバイルコインや、その上で動くeUSDを使えば、 越境送金国をまたぐ送金のこと を数秒〜数分で完了させることができます。送る側は暗号資産／ステーブルコインを用意し、受け取る側はSentzアプリなどで受け取り、そのまま現地通貨に換金したり、アプリ内残高として保有したりといった使い分けができます。
オンラインコンテンツへの少額チップや投げ銭
SNSやライブ配信、ブログなどに対して、数十円〜数百円程度の マイクロペイメントごく少額のオンライン決済 を行う用途とも相性が良いとされています。クレジットカード決済ではコストが見合わないような少額でも、暗号資産やステーブルコインであれば比較的低コストで送金できるため、クリエイター支援の新しい形としても注目されています。現時点では対応サービスは限定的ですが、将来的なユースケースとしてよく語られる領域です。
企業やプロジェクトでの利用シーン
企業やプロジェクトにとっては、「国際的なチームへの報酬支払い」や「フリーランスへの支払い」「サブスクリプション課金」などで、従来の銀行インフラを補完する手段として利用が検討されています。特に、新興国向けのサービスや、銀行口座を持たないユーザー層（アンバンクト）に向けた決済手段としてのポテンシャルが意識されています。
フリーランス・リモートワーカーへの報酬支払い
グローバルに活動するフリーランスやリモートワーカーへの報酬支払いでは、国や通貨ごとに送金手段が異なり、コストや手続きが複雑になりがちです。Sentzアプリでは、eUSDベースで支払いや請求書の発行ができるため、ドル建ての価値を保ちながら、現地通貨への換金までを一つのアプリで完結させることを目指しています。
デジタルサービスのサブスクリプション決済
SaaSやオンラインゲーム、デジタルコンテンツなどのサブスクリプション料金を、銀行口座やクレジットカードを持たないユーザーに対して徴収する手段として、モバイルコイン／eUSDのような暗号資産決済を導入する構想もあります。現状では採用事例は限定的ですが、「モバイル端末だけで完結する定額決済」という観点から、今後のユースケースとして議論されることが多い領域です。
モバイルコインの管理方法と対応ウォレット
MOBを安全に管理するには、取引所に置きっぱなしにするのではなく、自分で秘密鍵を管理する セルフカストディ自分で鍵を保管する保有方法 のウォレットを使うことが基本になります。モバイルコインには、公式・準公式のウォレットに加えて、マルチアセット型のウォレットも存在しますが、それぞれ特性やリスクが異なるため、自分の利用目的に合ったものを選ぶことが重要です。
MOBに対応した主なウォレット
以下は、MOBおよびモバイルコインのネットワークに対応している代表的なウォレットと、それぞれの特徴です。
| ウォレット名 | 種類 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Sentz Wallet（旧Moby） | モバイルウォレット（iOS／Android） | MobileCoin Inc.が提供する公式モバイルアプリで、電話番号とメールアドレスだけでアカウントを作成し、eUSDなどの資産を送受信できます。MOBを基盤とするネットワーク上で、請求書の発行やリンク送金など、決済に特化した機能が充実しています。 |
| MobileCoin Desktop Wallet | デスクトップウォレット（公式クライアント） | 公式サイトからダウンロードできるデスクトップ用ウォレットで、PC上でMOB残高の確認や送受信が可能です。大きな金額を長期保有する場合に、モバイル端末とは分けて管理したいユーザー向けの選択肢となります。 |
| Atomic Wallet などのマルチアセットウォレット | ソフトウェアウォレット（マルチ通貨対応） | Atomic Walletなど、一部のマルチアセットウォレットはMOBに対応しており、ビットコインやイーサリアムと一緒に管理できます。スワップ機能なども利用できますが、公式ウォレットではないため、開発元の信用性やセキュリティ情報を自分で確認したうえで利用する必要があります。 |
利用目的に応じたウォレットの利点
どのウォレットが最適かは、「頻度」と「金額」と「使い方」によって変わります。基本的な考え方は次のとおりです。
- 日常的に少額をやり取りするなら、Sentzのようなモバイルウォレットが使いやすい
- 中長期である程度まとまった金額を保有するなら、デスクトップウォレットやハードウェアウォレットとの併用が安心
- 複数の暗号資産をまとめて管理したいなら、マルチアセットウォレットが便利だが、信頼性のチェックが必須
例えば、「普段使い用の少額はモバイルウォレット」「長期保有用の多額はPC＋ハードウェアウォレット」といったように、用途ごとにウォレットを分けることで、利便性とセキュリティのバランスを取りやすくなります。
ウォレット利用時の注意点
MOBを含む暗号資産を安全に管理するうえで、最も重要なのが秘密鍵や シードフレーズウォレット復元用の単語の並び の扱いです。これらを第三者に知られると、ウォレット内の資産をすべて盗まれるおそれがあります。
- シードフレーズはオフラインで紙などに控え、絶対に他人と共有しない
- 公式サイトや公式ストア（App Store／Google Play）以外からアプリをダウンロードしない
- そっくりに偽装された フィッシングサイト本物そっくりの偽サイト にシードフレーズやログイン情報を入力しない
- OSやウォレットアプリは常に最新版にアップデートしておく
一度盗まれた暗号資産は、基本的に元に戻ってこないため、「面倒でもセキュリティ対策をしてから使い始める」ことが、結果的に最もコスパの良い自衛策になります。
モバイルコインのメリット
ここでは、モバイルコイン（MOB）およびそのエコシステムを利用するうえでの主なメリットを整理します。技術的な特徴だけでなく、実際の利用シーンをイメージしながら確認してみましょう。
- 高いプライバシー性と匿名性
- モバイル前提の使いやすさと高速送金
- 環境負荷の小さい決済インフラ
高いプライバシー性と匿名性
モバイルコインは、CryptoNote系の技術やリング署名、ゼロ知識証明などを組み合わせることで、送信者・受信者・送金額を第三者から見えにくくする設計になっています。これにより、特定のアドレスの取引履歴を追いかけて、「誰がどこにいくら送ったのか」を分析することが難しくなっています。
また、メッセンジャーアプリSignal内での支払い機能も、メッセージと同様のエンドツーエンド暗号化を前提としており、通信経路上での覗き見や改ざんに強いとされています。こうした特徴から、
匿名性誰の取引か特定されにくい性質
を重視するユーザーに選ばれている暗号資産の一つです。
モバイル前提の使いやすさと高速送金
モバイルコインは、名前のとおりモバイル端末からの利用を前提に設計されており、Sentzアプリなどを使えば、電話番号とメールアドレスだけでウォレットを作成できます。相手の電話番号や連絡先を選ぶだけで、数秒〜数十秒程度で送金できる体験は、従来のウォレットアドレスをコピー＆ペーストする流れに比べて直感的です。
また、Stellar由来のFBA型コンセンサスを採用していることから、トランザクションの確定が速く、手数料も抑えやすいとされています。これにより、「日常的な少額決済」をメインのユースケースとして想定しやすい設計になっています。
環境負荷の小さい決済インフラ
モバイルコインは、ビットコインのようなPoW（プルーフ・オブ・ワーク）型のマイニングを行わないため、電力消費が比較的少ない設計です。プロジェクト側は自らを
カーボンネガティブ排出量より多くCO2を相殺する状態
として位置づけており、環境負荷の小さい決済インフラであることをアピールしています。
ESG投資やサステナビリティを重視するユーザーや企業にとって、「環境負荷の小さい決済手段であること」は選好要因の一つになり得ます。
モバイルコインの注意点・リスク
一方で、モバイルコインには他の暗号資産と比べた際の弱点や、注意しておきたいポイントも存在します。ここでは代表的なデメリットを整理します。
- 対応取引所や流動性がメジャー通貨ほど多くない
- プライバシー通貨として規制・コンプライアンス面の不確実性が大きい
- 技術や仕組みが難しく、初心者には理解しづらい
対応取引所や流動性がメジャー通貨ほど多くない
モバイルコイン（MOB）は、ビットコインやイーサリアムに比べると、上場している取引所の数や出来高が限られています。CoinGeckoのデータでは、複数の取引所で取引が可能ではあるものの、主要銘柄と比べると
流動性市場で売買できる量と厚み
は高くありません。
流動性が低いと、「希望する価格でまとまった数量を売買しにくい」「急な価格変動が起きやすい」といったデメリットが生じます。大きな金額を扱う場合は、板の薄さやスプレッドを必ず確認したうえで取引を行う必要があります。
プライバシー通貨として規制・コンプライアンス面の不確実性が大きい
モバイルコインは高い匿名性を持つがゆえに、各国のマネーロンダリング対策（AML）やテロ資金供与対策（CFT）の文脈で、規制当局から注目されやすいタイプの暗号資産です。過去には、Signalへの統合を巡って「規制当局の関心を集めすぎるのではないか」といった批判的な声も上がりました。
規制環境は国・地域によって異なり、今後のルール変更次第では、取引所での取り扱いが制限されたり、利用がしづらくなったりする可能性があります。このように、
コンプライアンス法律や規制への適合状況
に関する不確実性が相対的に大きい点は、モバイルコインのリスク要因の一つと言えます。
技術や仕組みが難しく、初心者には理解しづらい
モバイルコインは、SGX（Intelのセキュアエンクレーブ）やCryptoNote、リング署名、ゼロ知識証明など、複数の高度な暗号技術を組み合わせて構築されています。
そのため、「なぜ安全なのか」「なぜプライバシーが守られるのか」を自分で理解しようとすると、ある程度の暗号理論やブロックチェーンの知識が必要になります。ホワイトペーパーや技術資料も専門的な内容が多く、初心者が最初に学ぶ銘柄としてはややハードルが高いと言えるでしょう。
現在の状況と今後の展望
モバイルコインは、2023年以降「Sentz（センツ）」ブランドへのリブランディングを進めており、現在は「グローバル決済アプリ」としての位置づけが強くなっています。Sentzは、法定通貨建ての価値を保つことを重視したeUSDという ステーブルコイン価格がドルに連動する暗号資産 を中心に、国境を越えた送金・決済・資産保全を提供するプロダクトへと進化しており、MOBはその基盤技術として位置づけられています
特に、ナイジェリアなど一部新興国では、Sentz EarnによるeUSD残高への利回り提供など、「銀行口座があっても十分に活用できていない層」や「インフレ通貨を避けたい層」に向けたユースケースが模索されています。 一方で、Signalとの統合や、過去のFTXとの関係などをめぐる議論・批判もあり、規制当局や市場からの見え方は決して一枚岩ではありません。
今後の展望としては、以下のようなポイントが注目されます。
- プライバシー保護型決済やデータ保護型ステーブルコイン（eUSD）の実需がどこまで広がるか
- 各国規制当局がプライバシー通貨や自主管理型ウォレットをどのように扱うか
- Sentzアプリと周辺サービスのユーザー数・決済ボリュームが着実に増えていくか
こうした点を踏まえると、 モバイルコインは「高機能なプライバシー決済インフラ」としてのポテンシャルを持ちながらも、規制やエコシステムの成熟度といった外部要因に大きく左右されるプロジェクト だと整理できます。利用や投資を検討する際には、技術面の魅力だけでなく、最新の規制・市場動向を継続的にチェックすることが重要です。
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