
「高利回りのプールに入れたのに、思ったより増えていない…」。そんなときに影で効いているのが、AMM型DEX特有の損失である
インパーマネントロスプール参加時の評価損
です。
本記事では、この“気づきにくい損”の正体を、AMMの基本仕組みから具体例・比較表・チェックリストまで交えてかみ砕いて解説します。
これからDeFiに挑戦したい方も、すでに流動性提供を始めている方も、「知らないうちに損していた」を防ぐための基礎知識として活用してください。
インパーマネントロスとは?基本の意味をわかりやすく解説
インパーマネントロスプール参加時の評価損とは、AMM型のDEXに流動性を提供したときに、
「そのまま仮想通貨を保有していた場合」と比べて見えない差が生まれてしまう現象のことです。
一見するとプールの残高は増えていても、同じ期間にただ保有していた場合より資産が少なくなっていることがあり、
これが“気づきにくい損”と言われる理由です。
インパーマネント(impermanent)は「一時的」という意味で、価格が元の水準に戻れば損失もほぼ消える可能性があります。 一方で、価格が戻らないままプールから資産を引き出してしまうと、その時点で損失が確定してしまいます。
「一時的な損失」と言われる理由
AMMでは、プール内の2つの通貨のバランスが常に自動調整されます。価格が動くたびにプール内の比率も変化するため、 元の枚数をそのまま保有していた場合とは異なるポジションになります。ここで、評価額に差が出ることがインパーマネントロスの正体です。
価格が一度動いてから再び元の価格に戻ったとき、プール内の通貨の枚数構成は最初とは変わっています。
それでも最終的な評価額はほぼ同じ水準に戻るため「一時的な損」と呼ばれます。
しかし、多くの場合は価格が完全には戻らないため、結果として一定の損失が残りやすい点に注意が必要です。
AMMと流動性提供の仕組みをおさらい
インパーマネントロスを理解するには、まずAMM自動で価格調整する仕組みと 流動性プールの動きをざっくりつかんでおくことが大切です。ここを押さえておくと、 「なぜ何もしないで保有した方が有利なことがあるのか」が直感的に分かるようになります。
AMMとオーダーブック方式の違い
中央集権型取引所(CEX)では、多くが「板(オーダーブック)方式」で価格が決まります。
一方、分散型取引所では流動性提供通貨を預けて取引を支えるを受けているプールに対して
取引が行われ、アルゴリズムに従って価格が自動的に決まります。
ユーザーは「いくらで買う・売る」という注文を出すのではなく、プールに通貨を預けることで、手数料収入と引き換えにリスクを取る形になります。
AMMでは、プールの残高が価格を決定する大きな要素になります。そのため、大口の売買や市場価格の急変があると、 プール内の残高バランスも大きく動き、それがインパーマネントロスの原因につながります。
x×y=kとLPトークンのイメージ
代表的なAMMでは、「プール内の通貨Aの数量×通貨Bの数量=一定値」というコンスタントプロダクト一定積で価格を決定の仕組みが使われています。 このルールを保つように、トレードのたびにプールの残高バランスが変化し、結果として価格も変動します。
流動性を提供すると、代わりにLPトークンプール持分を示す証券が発行されます。
LPトークンは「プール全体のうち、自分がどれくらいの割合を持っているか」を表すものです。
後でプールから資産を引き出すときは、このLPトークンを焼却することで、対応する割合の通貨A・通貨Bが戻ってきます。
このときの戻り方が、「そのまま保有していた場合」と異なることが、インパーマネントロスを生むポイントです。
DeFiそのものの仕組みや、AMM以外にどんなサービスがあるのかをもう少し広く押さえておきたい方は、 DeFiとは?銀行なしで資産運用する次世代の金融サービスをわかりやすく解説! を先に読んでおくと、この記事で扱うインパーマネントロスの位置づけがイメージしやすくなります。
また、実際に分散型取引所(DEX)やDeFiを触る際にはウォレットの準備も必要になります。 ウォレットの基本的な使い方や安全な扱い方に不安がある場合は、 メタマスクの使い方を初心者向けに解説|インストールから送金・安全対策まで完全ガイド もあわせてチェックしておきましょう。
具体例で理解するインパーマネントロス
抽象的な説明だけではイメージしづらいので、簡単な数値例を使って「何もしないで保有した場合」と「プールに預けた場合」の違いを見てみましょう。 実際の利回りや価格とは異なりますが、仕組みを理解するには十分です。
ETH/USDCプールのシンプルなケース
ここでは、1ETH=1,000USDCのときに、1ETHと1,000USDCをプールに預けたケースを考えます。
初期状態では、資産の評価額は合計2,000USDC相当です。
その後、ETHの価格が2,000USDCに上昇した場合を想定して、「ホールド」と「流動性提供」でどのような違いが出るかを比較します。
| パターン | 最終保有量(例) | 最終評価額(例) |
|---|---|---|
| そのままホールド | 1ETH+1,000USDC | 1ETH=2,000USDC + 1,000USDC = 3,000USDC |
| ETH/USDCプールに提供 | 約0.707ETH+約1,414USDC | 0.707ETH×2,000USDC + 1,414USDC ≒ 2,828USDC |
どちらもスタート時点の評価額は2,000USDCでしたが、最終的には「ホールド」の方が3,000USDC、
「プール提供」の方は約2,828USDCとなり、その差約172USDCがインパーマネントロスに相当します。
この差は、プール内でETHを一部売却してUSDCを多く保有する形になったことから生じています。
価格上昇の恩恵を100%受けられなかった結果、ホールドよりも不利になっているのです。
手数料収入でどこまでカバーできるのか
実際の運用では、インパーマネントロスはプールから得られる取引手数料やインセンティブ報酬によって一部または全てが相殺されることがあります。 先ほどの例で、合計で200USDC分の手数料を得られたとすると、最終評価額は約3,028USDCとなり、 ホールドより有利になる可能性もあります。
つまり、インパーマネントロスは必ずしも「プール提供=損」と決めつけるものではなく、 「価格変動による不利な差」と「手数料などの収益」とのバランスで評価する必要があります。 このバランスを見誤ると、期待していたほどリターンが出なかったり、むしろマイナスになることもあります。
どんなときにインパーマネントロスが大きくなる?
インパーマネントロスの大きさは、「価格変動の度合い」と「ペアの性質」に大きく左右されます。 ここでは、どんな状況で損失が膨らみやすいのかを整理しておきましょう。
価格乖離とボラティリティの影響
2つの通貨の価格が大きく離れるほど、インパーマネントロスは大きくなります。
特に、片方だけが急騰・急落した場合、プール内のバランスが大きく崩れ、インパーマネントロスも拡大します。
この価格変動の激しさは、一般にボラティリティ価格変動の大きさと呼ばれますが、
ボラティリティが高いペアほどリスクも高くなると覚えておくと分かりやすいです。
価格変動が大きいペアのプールに高利回りが提示されているのは、「そのぶんインパーマネントロスが発生しやすいから」という側面もあります。 高い年利に目を奪われる前に、「その利回りはどんなリスクの見返りなのか」を一度立ち止まって考えることが重要です。
インパーマネントロスが大きくなりやすい典型的なパターンとして、次のようなものがあります。
- 片方の通貨が数倍以上に急騰し、もう片方はほとんど動かないペア
- 一方が大きく下落し、プール内のその通貨の比率が極端に増えてしまうケース
- 上下への激しい値動きが繰り返され、長期的に見ると価格が大きく乖離している市場環境
「高利回り=安全」ではないという点は、インパーマネントロスを考えるうえで最重要ポイントです。
表示されている年利だけで判断するのではなく、「価格が急変したときにどの程度の差が出そうか」を事前にイメージしておきましょう。
特に、年利◯%といった高利回りの商品が気になっている方は、 【DeFi投資】なぜ利回りは高いのか?非中央集権型の仕組みとリスクの種類を解説 もあわせて読んでおくと、「その利回りはどんなリスクの見返りなのか」をより立体的に理解できるはずです。
インパーマネントロスと「元本割れ」の違い
インパーマネントロスと、いわゆる「元本割れ」は混同されがちですが、性質は少し異なります。 ここを区別しておくと、リスクの中身がより明確になります。
評価額ベースの差と確定損
インパーマネントロスは、「同じ期間に通貨をそのまま保有していた場合」と比べたときの差です。
つまり、プールから資産を引き出した瞬間に、「本来より少ないリターンしか得られなかった」という形で表面化する損失です。
一方、元本割れは、投じた資金そのものが減ってしまう状態を指し、インパーマネントロスとは別の観点になります。
例えば、仮想通貨そのものの価格が半分になれば、ホールドしていてもプールに預けていても、評価額は大きく下がります。
この価格下落による損失に加えて、「もしホールドしていればもう少しマシだった」という部分がインパーマネントロスです。
そのため、インパーマネントロスだけを見ても実際のリスクの全ては分からず、「価格変動リスク」とセットで考える必要があります。
インパーマネントロスはあくまでDeFi特有のリスクの一部に過ぎません。 仮想通貨投資全体で見ると、価格暴落・ハッキング・詐欺など、他にも押さえておきたいポイントがあります。 まだ全体像を整理できていないと感じる場合は、 仮想通貨のリスクとは?詐欺・暴落・ハッキングの回避法を初心者向けに解説 で一度リスク全体のマップを確認しておくと安心です。
インパーマネントロスを抑える・回避する5つの戦略
インパーマネントロスを完全にゼロにすることは難しいですが、「どの程度までなら許容できるか」を決めたうえで、 損失を抑えやすい設計を選ぶことは可能です。ここでは代表的な5つの戦略を紹介します。
代表的な5つのアプローチ
インパーマネントロスを意識した運用では、「ペアの選び方」と「プロトコルの仕組み」の2つが大きなポイントになります。 その観点から、次のような工夫がよく使われます。
- 価格が連動しやすい通貨ペア(例:ETH/stETHなど)を選ぶ
- ステーブルコイン価格がほぼ一定の通貨同士のプール(USDC/USDTなど)を活用する
- ボラティリティの高すぎる草コイン同士のペアは避ける
- 片側だけ預けられるシングルサイドステーキング片方のみ預ける運用やレンディングを検討する
- インパーマネントロス保険やヘッジ機能を備えたプロトコルを選ぶ
ステーブルコイン同士のプールは、価格変動が小さいためインパーマネントロスも比較的小さくなります。 その代わり利回りはやや低めになりがちですが、「元本を大きく減らしたくない」というニーズにはマッチしやすい選択肢です。
シングルサイドで預けられる仕組みを使えば、実質的には「片側はプロジェクト側がヘッジしてくれている」ようなイメージになります。 その分、報酬の原資やリスクの分担方法がプロトコルごとに異なるため、ホワイトペーパーや公式ドキュメントを事前に確認しておくことが大切です。
「LPに入れる以外の選択肢」も含めて比較したい場合は、 DeFiレンディング・借り入れの活用法|仮想通貨を「寝かせない」ための効率的な資金戦略 や ステーキング vs レンディング|長期運用における安全性・利回り・流動性を徹底比較 を読んでおくと、「どの運用にどこまでリスクを取るか」を決めやすくなります。
そもそもの資産配分については、 【投資の基本】仮想通貨で「分散投資」が生命線である理由|BTC・ETH以外に何をどう組み合わせるか で紹介しているように、複数の銘柄・複数の運用方法に分散させることで、インパーマネントロスを含む個別リスクをならしていく発想も重要です。
初心者向け:実際に運用する前のチェックリスト
「なんとなく利回りが高いから」という理由だけで流動性提供を始めると、後から想定外の損失に驚くことになりかねません。 実際に資金を入れる前に、最低限チェックしておきたいポイントを整理しておきましょう。
ここでは、「このプールに本当に資金を入れて良いか?」を判断するためのシンプルな観点をまとめています。 軽くでも良いので、一つひとつ確認してからスタートすると失敗しにくくなります。
- 投入する金額は、生活費とは切り離した余剰資金になっているか
- 全体のポートフォリオのうち、何%までならインパーマネントロスを許容できるか決めているか
- 過去の出来高やTVL(預かり資産残高)を確認し、極端に過疎なプールではないかどうか
- 利回りの根拠(手数料・インセンティブ・トークンの発行など)をざっくり把握しているか
- 「どんな状況になったら撤退するか」をあらかじめ決めているか
どこまでインパーマネントロスや価格変動を許容できるかは、人それぞれの家計や性格によって変わります。 「そもそも投資に回してよいお金はいくらか」「仮想通貨を全体の何%までに抑えるか」といった土台を固めたい場合は、 なぜ「余剰資金」以外で投資してはいけないのか?生活を守る資金計画の立て方 と リスク許容度から逆算するポートフォリオ戦略|仮想通貨を「全財産」にしない線引き をセットで読んでおくと、自分なりの「ここまでなら許容できるライン」が決めやすくなります。
特に重要なのは、「撤退ライン」を事前に決めておくことです。価格が下がったり、利回りが急に低下しても、 その場の感情で判断せず、あらかじめ決めたルールに従って行動できるようにしておきましょう。
インパーマネントロスに関するよくある質問(FAQ)
最後に、インパーマネントロスについて初心者が疑問に感じやすいポイントをQ&A形式で整理します。 細かい点で不安が残っている場合は、ここを読みながら自分の状況に当てはめてみてください。
Q. ステーキングにもインパーマネントロスはありますか?
一般的な単体トークンのステーキングでは、インパーマネントロスは発生しません。
インパーマネントロスは「ペアで預ける」「プール内で比率が変化する」という条件がそろったときに生じるものだからです。
ただし、リキッドステーキングトークンを他のDeFiに預ける場合など、間接的にインパーマネントロスの影響を受けるケースもあるため、
どのレイヤーでどんなリスクを取っているのかは意識しておきましょう。
ステーキングそのものの仕組みや、どんなリスクとリターンがあるのかを整理したい場合は、 ステーキングとは?仮想通貨を預けて稼ぐ仕組みを初心者向けにやさしく解説! から基礎を押さえておくとスムーズです。 また、「ロックアップで動けないリスク」にフォーカスしたい方は、 ロックアップと流動性|ステーキング中の「価格暴落」に備えるリスク管理戦略 もあわせて読んでおくと、DeFiだけでなく取引所ステーキングを含めた全体像をつかみやすくなります。
Q. 「損失ゼロ」をうたうプールは本当に安全ですか?
「インパーマネントロスを補償する」とうたうプロトコルの多くは、保険のような仕組みや独自トークンの発行によって、
損失を一部肩代わりしています。仕組み自体は便利ですが、その分どこかで別のリスクを取っていることが多い点には注意が必要です。
トークン価格が大きく下落したり、保険の原資が不足するなどのシナリオも想定し、プロジェクトの持続可能性を事前に確認しておきましょう。
Q. どのくらいの利回りならインパーマネントロスを許容してもよいですか?
一律の正解はありませんが、目安としては「インパーマネントロスがどの程度発生し得るか」をざっくり想定し、
それを上回る期待収益がありそうかどうかで判断することになります。
例えば、「価格が2倍になったときに●%程度のインパーマネントロスが出る」と分かっているなら、
その想定を上回るだけの手数料収入や報酬が期待できるかを考える、というイメージです。
高利回りの商品を見るとつい飛びつきたくなる…という方は、自分の行動パターンを客観的に見直してみるのもおすすめです。 「どういう人が損をしやすいのか」「SNSの煽りにどう距離を取るか」は、 仮想通貨で損する人はこんな人|共通点と回避策 や SNSインフルエンサー「煽り」の真実|ポンプ&ダンプを見抜く3つのサイン で具体例とともに解説しています。
まとめ|インパーマネントロスを理解して「なんとなく高利回り」に飛びつかない
インパーマネントロスは、AMM型DEXならではの「気づきにくい損」です。
しかし、仕組みと発生条件を理解しておけば、必要以上に恐れる必要はありません。
大切なのは、「なぜこの利回りが実現しているのか」「どんなリスクの見返りなのか」を自分の言葉で説明できる状態で運用を始めることです。
高利回りのプールほど、価格変動や流動性のリスクが潜んでいることが少なくありません。
自分のリスク許容度や投資期間に合ったプールを選び、余剰資金の範囲でコツコツと試していく姿勢が、長くDeFiを活用するうえでの近道です。
インパーマネントロスを正しく理解し、「知らない損」を減らしながら、AMMやDeFiを賢く使いこなしていきましょう。
インパーマネントロス以外にも、「ロックアップで身動きが取れなくなるリスク」も長期運用では見逃せません。 ステーキング中の価格暴落に備えた考え方については、 ロックアップと流動性|ステーキング中の「価格暴落」に備えるリスク管理戦略 で詳しく解説しているので、あわせて読んでおくとDeFi運用全体のリスク管理がより立体的になります。

